記事詳細

【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】縦断高校野球列島(29)~兵庫県~ 日本一を2度目撃 豪腕・金村の報徳と犠打30の育英 (2/4ページ)

 象徴的なシーンは決勝戦の8回裏、2対2の同点で迎えた育英の攻撃の場面だ。1死一塁三塁と勝ち越しの絶好のチャンス。対戦相手は埼玉の春日部共栄、マウンドにはこの大会屈指の完成度を誇る左腕土肥義弘(元西武など)。

 速球の切れは抜群、変化球ではカーブの曲がりが良く三振も多い。制球は折り紙付き。ユニホーム姿は帽子のつばの赤がアクセントとなり少々かわいらしく見せるが、この2年生は百戦錬磨で度胸満点、牽制(けんせい)やフィールディングにも長(た)けていて隙を見せず、ピンチでも口元に薄い笑みを浮かべるなど不敵なタイプだった。その土肥を見事に攻略した……。

 この年の育英の必殺技はセーフティースクイズだ。この戦術は守備側にとって厄介だ。オーソドックスなスクイズバントのようにベンチのサインでランナーがスタートして打者がバントするというバントエンドランの形ではない。セーフティースクイズは打者がバントしたのち走者は転がったのを視認してからスタートする。打者はヒッティングの姿勢からいきなり仕掛けたり、バントの構えでそのまま実行したりする。

 打者は確実に転がせるボールしか試みない。ボールには手を出さない。ストライクでもやりにくければ見送る。だから走者が飛び出してアウトになることはない。ツーストライクからの空振りや飛球でもダブルプレーにはならない。もちろん、走者は遅れてスタートするのだから足が速くなければならないし、スライディングの技術も問われる。打者は走者のスタートが遅い分、転がり方を緩くコントロールしなければならない。

関連ニュース