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【松本秀夫 プロ野球実況中継】大島康徳さんは「間抜けなアナ」にも優しかった

 大島康徳さんの訃報に接しました。悲しみとともにさまざまな思い出が蘇ります。

 大島さんの中で私の印象は「間抜けなアナウンサー」だったと思います。1980年代後半、駆け出しの私は中継に関係ない東京ドームの日本ハム戦をよく取材しました。右も左もわからない私が選手に質問しても、なかなか取り合ってもらえず…。

 そんな中で大島さんの対応は傑出していました。「おまえはホンマに間抜けなことばかり聞くなぁ」。周りの関係者に聞こえよがしの大声ですから、顔が真っ赤になりました。でもその後で必ず私をベンチの端に呼び寄せてくるんです。「あのなぁ、バッターの心理っちゅうのはなぁ…」。そんなことを教えてくれたのは、後にも先にも大島さんだけでした。

 大島さんの2000安打達成特番の時もしでかしました。事前に大分の中津でお父様の声を収録してくるはずだったのに、録音機材の電源コードを東京に忘れてきた! 「おまえはホンマに間抜けやなぁ」。呆れ返った大島さんは「いいから一杯飲んで帰れ」とご馳走してくださいました。

 そんな大島さんが一度だけ、私を褒めちぎってくれたことがあります。引退後に解説者として来ていただくプランがあり、ニッポン放送の役員・幹部と会食をしたのです。席上、マイクを持った大島さんは「松本アナウンサーにはいつも大変お世話になっています。取材も熱心だし、彼は素晴らしいアナウンサーです。そのことを強く申し上げます」と…。

 嘘ばっかりです(笑)、でも本当に優しかった。底抜けに明るくて義理人情に厚くて涙もろくて。局が違っても、球場では最晩年まで「元気か?」と声をかけてくださいました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。 (フリーアナウンサー・松本秀夫)

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