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【江尻良文の「崩壊の危機に瀕すセントラル・リーグ」(4)】10・19決戦の裏で球界参入したオリックス 低すぎた知名度、別会社にマスコミ殺到の“珍騒動”

 2005年にギブアップした近鉄球団を吸収合併し、球界再編騒動の主役になったオリックス。

 一時は仰木マジックとイチローの師弟コンビで“がんばろう神戸”を掛け声にして球界の救世主になったこともある。阪神大震災からの復興でリーグ優勝、日本一になり、我が世の春を謳歌した。

 オリックスほど球界参入で珍騒動を引き起こした球団も稀だ。

 1988年に、阪急ブレーブスを買収してパ・リーグ参入が表面化したが、これが今でも語り継がれている10・19決戦のその日だった。川崎球場でのロッテ対近鉄のダブルヘッダーが行われ、近鉄が連勝すれば、土壇場での大逆転優勝。それ以外は西武の優勝という、まさに球史に残るメモリアルデーだ。

 しかも、当時の社名はオリエント・リースだったが、マスコミが殺到したのは、全く別会社のオリエントファイナンスだった。

 マスコミに大挙して押しかけられたオリエントファイナンスの方はたまらない。球団買収などといわれてもちんぷんかんぷんで、はた迷惑以外の何物でもない。茫然自失するしかなかっただろう。

 それほどオリエント・リースの知名度は低かったことになる。だからこそ企業名をオリックスに変更するに際して、プロ野球界に参入したのは正解だっただろう。

 このとき、野球協約の改正という重大問題まで引き起こした。1年で終わった日拓ホーム・フライヤーズの二の舞を恐れた日本野球機構(NPB)は、球界参入に莫大な供託金を必要とする新たな条項を作ったのだ。

 第三十六条の六「新参加球団よりの預かり保証金」。内容は「参加資格を取得した球団が十年間、参加保有した場合には、日本野球機構の規定の定めるところにより納入した球団に返還」と明記している。10年間は球団を保有する必要性を求められているのだ。

 オリックスの宮内義彦オーナーは当初、一部球界関係者から「バナナ族」と言われていた。外見は黄色(日本人)だが、一皮むけば白(欧米人的)というワケだ。

 しかも「オリックスは、ビジネス的にも日本よりも米国で知名度があり、ウエートが重い」。さらに「米国ではメジャーリーグはまさに国民的なスポーツ。球団オーナーは尊敬される」というメリットがあるという。

 現在も球団を保有しているのは当然か。逆に万年Bクラスで、シーズン中に監督を解任、代理監督は翌年、監督に就任というカネのかからないイージーなやり方をしている。ファンの不満が膨らみ、逆に球団身売りを求める声も少なくない。

 プロ野球経営に情熱を燃やし続けた日本ハムの故大社義規オーナーとは、対極のオリックス・宮内義彦オーナーと言える。過去のパ・リーグ消滅の危機を再検証することは、現在、初めて存亡の危機に立たされるセ・リーグにとって、無駄にはならないだろう。(江尻良文)

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