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【あの名場面の裏側】G戦士編 中畑を救った“出世アーチ” スペアのコンタクトレンズがとらえたマリオ・ソトの速球 (3/3ページ)

 マウンドには二番手のマリオ・ソト。この年のレッズのセーブ王、絶対的な“守護神”だ。しかし、中畑は「必ず打つ」不思議なほど自信にあふれていた。そして本当に打った。長身のソトが投げ込んだ速球をコンタクトレンズはしっかりととらえた。打球は驚くほど伸びた。煙る小雨を突き破って高く、鋭く、遠く…。左翼席上段に飛び込む大リーガー顔まけの特大アーチ、逆転2ランだ。中畑ははねた。万歳した。あらゆる喜びの動作がダイヤモンドを回る短い時間に爆発した。

 7-6で巨人は勝った。レッズのスパーキー・アンダーソン監督は「ナカハタはパワーがあるし、なにより球を恐れぬガッツは素晴らしい」と絶賛。「あの選手がマイナーだとは信じられない。すぐに上に上げろ、とミスターシゲ(長嶋監督)に進言しよう」と付け加えた。もともと中畑の前向きな性格を買っていた長嶋監督はアンダーソンに言われるまでもなく、翌年から1軍に定着させ、伊東秋季キャンプなどで鍛え抜き、やがて巨人のスター選手へと成長させていくのだ。

 ソトからの一発はトレード寸前、廃業寸前だった中畑清を救う“出世アーチ”となったのである。(スポーツジャーナリスト・柏英樹)

 ■柏 英樹 64年報知新聞社入社、記者生活をスタートさせる。東京五輪をはじめモントリオール、アテネ五輪など取材、71年から巨人担当、ON番記者を務め両氏とはいまなお親交が深い。99年独立しフリーに。青学大時代ラグビー部の主将を務めたことから昨年のW杯もフルカバー。来年2度目の東京五輪を現役記者で迎える。78歳。

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