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【勝負師たちの系譜】王座に挑む晩成の棋士・木村一基九段 19歳年下の実力者相手に「やっと自分の時代」 (2/2ページ)

 タイトル奪取は通常、若いうちに取れない棋士は、年を取ると余計に不可能となる。若いというのは20代か、せいぜい35歳位までであろう。

 その意味で木村は『晩成』と呼ぶにふさわしい棋士かと思う。それでも30代から何度もタイトル戦に出場し、勝率も7割の時代が長く続いたから、弱かった棋士が年を取って急に強くなった訳ではない。ただ結果が出なかったというだけである。

 この木村が今期、王座戦の挑戦者決定戦で佐藤康光九段を破り、挑戦者に名乗り出た。挑戦の相手は永瀬拓矢王座。

 木村より19歳年下の若き実力者にこの歳で挑戦できるのも、長年羽生世代に頭を押さえつけられてきたことで、やっと自分の時代が来たと思えるせいか。

 私が常に言う、いつまでも強くなりたいという純粋な気持ちを、持ち続けることができるからだと思う。

 王座戦の第1局は、双方が得意とする角交換腰掛銀から、午前中に詰みまで読むような、激しい戦いに。

 最後は二転三転する終盤戦を木村が制した。このまま再度、木村がタイトルを手にすることができるのか、見ものである。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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