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【菊池雅之 最新国防ファイル】遠隔で深深度の機雷処理 世界最大級FRP製「あわじ」型掃海艦

 ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場(横浜市鶴見区)で3月16日、海上自衛隊「あわじ」型掃海艦の3番艦にあたる「えたじま」が引き渡された。

 掃海とは、敵が海にまいた機雷を処理して、安全に航行できるようにすること。その任務を行うのが掃海艦艇だ。

 先代の「やえやま」型など、海自の歴代掃海艦艇は木造船だった。機雷の中には、金属が発する磁気に反応して爆発するものがあるからだ。乗員たちが使うロッカーやベッドなど、艦内でも金属製の物は使わずに木製とする徹底ぶりだった。

 しかし、木造船には水を含んで船体が重くなる、寿命が短く20年程度しかもたない、などのデメリットがあった。

 そこで、世界では軽くて丈夫なFRP(繊維強化プラスチック)を素材として用いる掃海艇が増えてきた。これに倣い、海自掃海艦艇もFRP製とすることにした。「あわじ」型は世界最大級のFRP船となった

 先代「やえやま」型の基準排水量は1000トンもあったが、ほぼ同じ寸法ながら、基準排水量を690トンと抑え、かなりの軽量化を図った。

 なお、海自には、1000トンを超えるサイズを「艦」、それ以下を「艇」と分ける基準がある。これを適用すると、「やえやま」型は「掃海艦」となり、「あわじ」型は「掃海艇」となる。

 しかし、「あわじ」型は、「やえやま」型の任務だけでなく「掃海艦」という種別も継承した。

 任務とは、深深度に仕掛けられた機雷を処理すること。機雷には、潜水艦を狙うため、深さ2000メートル付近に仕掛けるタイプもある。通常の掃海艇では対処できない深さだ。

 これに対するため、「あわじ」型は、機雷探知機を海中へとつり下げて使う可変深度ソナーVDSを搭載している。どこまで深く潜って探知できるかは非公開だ。

 さらに、深度600メートル付近を自律航行できる水中無人機UUVを配備した。米製の「リーマス600」というモデルだ。

 発見した機雷を誘爆処理するのが、光ファイバーを通じた遠隔操作で海中を進む無人爆弾である自走式機雷処分用弾薬EMDだ。おもりがつながれた係維索を切断し、支えを失い海面に浮いてきた機雷を遠隔操縦式20ミリ機関砲で撃って爆発させる方法もある。

 こうして、多くの装備で無人化が取り入れられているのは、万が一、処理中に機雷が反応しても、人的被害を出さずに済むようにするためだ。

 「やえやま」型が3隻体制であったこともあり、「あわじ」型も3隻で建造終了かと思われていたが、2019年8月に出された「防衛予算の概算要求」に、「あわじ」型4番艦の建造費約126億円が計上された。さらに同型艦が建造される予定がある。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『自衛隊の戦力-各国との比較』(メディアックス)、『陸自男子-リクメン』(コスミック出版)など。

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