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【大前研一 大前研一のニュース時評】波紋呼ぶ温家宝前首相の“習近平主席批判” 「中国は公平と正義に満ちた国…貧者や弱者に同情、侮蔑や抑圧に反対する」 (1/2ページ)

 中国の温家宝前首相がマカオの新聞に「中国は公平と正義に満ちた国で、人を尊重し、自由で奮闘する気質があるべきで、そのために私も努力してきた。私は貧者や弱者に同情し、侮蔑や抑圧に反対する」と寄稿し、波紋を呼んでいる。

 寄稿は3~4月、マカオ導報に4回にわたり掲載されたもの。表向きは昨年12月に亡くなった母親が清廉潔白な人だったことなどを回想したものだが、教師だった父親が文化大革命(1966~76年)の際、顔が腫れて目が見えにくくなるほど殴られたことにも触れている。習近平政権になって、文革時代の否定的な側面は報じられなくなっている。

 温家宝氏は現在78歳。胡錦濤前国家主席の下で長く首相を務め、2008年の北京五輪、10年の上海万博を成功させ、GDPも日本を抜いて世界第2位に押し上げた。

 かつて中国の開放路線に導いた最高指導者・トウ小平は「豊かになれる人から先になりなさい。貧しい人は後で追いつけばいいでしょう」と先富論を語っていた。しかし、格差は広がり、金持ちは一層金持ちになり、後ろで待っている貧しい人たちに対する救済は追いつかず、分断が起こった。

 これを何とか食い止めようと、02年スタートの胡錦濤・温家宝体制は、格差の是正、社会的公正、社会福祉の充実に重点を置く「和諧(わかい)社会」を提起した。「和」は「和睦」(心を合わせて助け合うこと)、「諧」は協調(衝突がないこと)。いわゆる穏健正統派で、この時代、割と中国がまともな道を歩み始めていた。

 その温氏が、任期制限を撤廃して永久皇帝のような振る舞いで「ヒトラー化している」と私が評した習近平国家主席に対し、ある意味、かなり強烈な批判を、場末も場末、マカオの新聞でしたわけだ。中国メディアを避けたのだろう。

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