もしMLBが選手の五輪参加を許しても…侍ジャパンにとって米国代表は脅威ではない (1/2ページ) ロバート・ホワイティング サクラと星条旗
東京五輪が閉幕した。国民の反対の声と新型コロナウイルス感染拡大の中での開催となったが、多くの人が大会は成功したと受け止めている。少なくとも選手村では、熱中症、新型コロナウイルスによる死者は一人も出なかった。一定の祝意は示されてしかるべきだろう。
そこには興奮と感動と心温まる交流があった。何より、日本が獲得した金メダルは史上最多の27個に上り、柔道の個人戦でのメダル数11個に加え、体操など複数の種目で栄冠を手にし、スケートボードは世間に広く知れ渡ることとなった。
中でも侍ジャパンが米国を2対0で破り金メダルを獲得したことは、今大会のハイライトと言えよう。土曜の夜に生中継された決勝戦に多くの国民が声援を送り、番組ではトップニュースとして報じられ、スポーツ紙を始め多くの新聞の紙面トップを飾った。
巨人・原辰徳監督はこう話した。「世界中に日本の精神というものを見せることができた」
知ってのとおり、日本はオリンピックの野球競技に大きな重きを置いている。NPBは最高のメンバーで夏季五輪に臨むために、公式戦を中断した。一方、MLBはシーズンを続行し、40人枠に登録されている選手の五輪出場を認めなかった。つまり米国のトップ1200人に入る選手たちは、今回のオリンピックに参加できなかったということだ。
そのため米国代表チームは、30代後半のベテラン選手と若手有望株により構成された。それでも世界最高峰のチームの1つであることは証明されたが、地元で五輪の試合を観戦する人はいなかった。そもそも関心がないのだ。米国の野球ファンにとって、五輪の野球はマイナーリーグの試合と同じなのである。
AP通信のロナルド・ブラム氏と同じ考えを持つ野球ファンも多い。つまり、そもそもオリンピックに野球を採用すべきではない、というのだ。ブラム氏はこう訴えかける。「参加6カ国の代表選手たちは皆、素晴らしい能力を持っている。だが、世界のトップ1200人に入る選手たちではない。オリンピック競技として、本当にこれでよいのだろうか?」
これは珍しい意見ではなく、野球を五輪種目に採用するべきかという議論において、度々IOC(国際オリンピック委員会)メンバーからも聞かれる言葉だ。
彼らはメジャーリーグでの野茂英雄、イチロー、松井秀喜、ダルビッシュ有の活躍をよく知る。大谷翔平はメジャーリーグで最高の選手と言われている。その一方で、筒香の存在にも目を向ける。横浜ベイスターズ時代はオールスター常連の強打者だったが、大リーグへの挑戦は失敗に終わった。レイズでも、ドジャーズでも出番はなく、ドジャーズ傘下の3Aオクラホマシティーからパイレーツへ移籍した。筒香のような選手は大勢いる。
知り合いのMLB代理人はよく言っている。日本のプロ野球選手で、メジャーで通用する力を持つのは半分以下で、その大半は投手だ、と。日本の投手は多彩な変化球を持ち、コントロールも抜群だが、打者は100マイル(161キロ)の速球を打てるだけの力と俊敏性を持ち合わせていない。
問題は、MLBとNPBでは選手の育成システムに天地ほどの差があることだ。MLB球団は収益のために運営され、層の厚いファーム組織のもとで非常に洗練された育成システムを推進している。それに対しNPB球団は親会社の広告塔に過ぎず、そのファーム組織と育成システムには厚みがない。