【マンション業界の秘密】マンション購入で「年収7倍」のレバレッジ、ペアローンの危険性 需要層の収入は頭打ちも価格だけ上昇 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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マンション購入で「年収7倍」のレバレッジ、ペアローンの危険性 需要層の収入は頭打ちも価格だけ上昇

 東京のマンション価格上昇が止まらない。マンションデベロッパーの仕入れ担当に取材すると、開発用の事業用地は今も高騰を続けているとか。つまり、来年、市場で売り出される新築マンションは今よりも高くなるということだ。

 不動産経済研究所の公表資料によると、2020年の東京都区部で発売された新築マンションの平均価格は7712万円。10年前の10年は5497万円。約1・4倍になったことになる。それでも、ある程度は売れているのだ。

 一方、厚生労働省による賃金構造基本統計調査では、10年から20年までに東京都におけるサラリーマンの平均年収は約364万円から373万円になった。ほんのわずかしか増えていない。

 では、なぜ高くなったマンションがそれなりに売れてきたのか。理由は金利が下がったこととライフスタイルの変化にある。

 まず、この10年で住宅ローンの金利は実質的に1%程度下がった。今なら変動金利が0・5%未満で借りられるケースも多い。金利が低ければ、その分、返済額が下がるので購入予算は上げられる。多くの人は、借入額よりも月々の返済額を重視する。要は自分たちの収入で支払えるかどうか、という基準だ。

 さらに近年、女性は結婚や出産後もフルタイムで仕事を続けることが普通になった。その結果、世帯年収は飛躍的に向上。1000万円以上の世帯年収がある30代カップルは珍しくなくなった。

 一方、長引く金融緩和でマネーは供給過剰気味で、金融機関は住宅ローンの貸出に積極的だ。金利低下もあって、年収の7倍程度までは許容範囲となっている。最終返済時の年齢制限も、金融機関によっては80歳までとしているところまである。

 その結果、20年前なら高級物件とされた5000万円超のマンションは、都心エリアに限ると「買いやすい」価格帯になった。30代ファミリー向けの主力価格帯は7000万円台から8000万円台となりつつある。

 特に東京の湾岸エリアでは、そういう価格帯のタワーマンションでもそれなりに販売が進む。だから大手デベロッパーは争ってこのエリアでの開発事業を進めている。

 ただ、こういった現象は単に購入者たちがレバレッジを高めに設定しているに過ぎない。

 変動金利はいつか上昇に転じる。そうなれば不動産価格は下落する。

 さらに言えば、統計にもよるが、結婚した3組に1組は離婚するなどとも言われる。高額で組まれたペアローンは、3分の1の確率でイレギュラーに終了する運命にある、と仮定することもできなくはない。

 首都圏でも近畿圏でも、郊外エリアで開発分譲されている従来型の大規模ファミリーマンションは売れ行きが芳しくない。需要層の収入が頭打ちなのに、マンション価格だけが上がった図式が、そのまま販売状況に反映されているのだ。

 レバレッジをきかせ過ぎた購入が目立つ都心でのマンション購入が、むしろ異様なのだろう。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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