【お金は知っている】菅政権“消費税減税なし”で賃金と雇用の好転は不可能だ - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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菅政権“消費税減税なし”で賃金と雇用の好転は不可能だ

 あっという間に、菅義偉政権が誕生した。菅氏はアベノミクスの継承をうたっているが、携帯電話料金の引き下げなどの規制改革、賃金の引き上げなど、具体策を明示することで、ぼやけてきたアベノミクスを再活性化する意志が明確だ。縦割りシステムの官僚に引きずられることなく、リーダーシップを発揮すると期待できる。

 問題は民間だ。携帯電話料金の値下げは電波割当権限を持つ政府の影響力は絶大だから、早期に実現できるかもしれないが、雇用や賃上げは企業社会全体のコンセンサスが形成されないと、掛け声倒れに終わってしまう。

 菅氏は12日の日本記者クラブでの自民党総裁候補討論会で、「安倍政権においては、雇用が400万人増えている」「民主党政権までは正規が減って非正規が増えてきたのでありますけども、アベノミクスによって、正規の方が150万人増えてます」「最低賃金も20%引き上げてます」と成果を強調し、賃金、雇用情勢の一層の好転に自信を示した。

 他方では、将来の消費税増税を支持した見解を修正し、今後10年は消費税増税しないという安倍氏の「公約」を踏襲するとした。

 実際にアベノミクスは賃金、雇用で力強い改善をなしえたのだろうか。グラフはアベノミクスが始まって間もない2013年7月と最新の統計時点である今年7月の実質賃金(月収ベース)を常用雇用、パートと双方を総合した全雇用に分けて算出した。実質賃金は賃上げ率から消費者物価上昇(CPI)率を差し引くが、日銀統計のCPIを参考に、消費税増税分を除外した実質賃金上昇率も付け加えた。

 一目瞭然、消費税上昇分も加えたCPIでみると、常用雇用ですら実質賃金は7年前より低い。名目額の増減は常用で2万円弱、パートは2800円増えているが、月収増は物価上昇率にはるか及ばないのだ。コロナ・ショックを受けた影響はあるとしても、4月時点でも7年前に比べて常用2万5000円増、パート560円減という具合であり、実質賃金減のトレンドは明確だ。

 さらに恐るべきは2度にわたる消費税率引き上げの衝撃だ。消費税増税分を除去した実質賃金は常用で辛うじてプラス、あとはマイナスだ。デフレとは一般的には物価が下がり続ける状態をさすが、経済学的には需要が縮小し続けることで物価に絶えず下落圧力が加わる状態をいう。消費税増税のために強制的に物価が押し上げられ、同時に家計の可処分所得が減るために需要が大幅に落ち込む。デフレ下での消費税増税はデフレを加速させるのだ。

 産業界は、内需が増えない中、賃上げに応じられるはずはない。正社員を増やしても賃金は極力抑え、低賃金の非正規を雇う。冒頭の菅発言の数値の基準時点は不明だが、総務省統計によれば、今年1~3月平均の正規雇用は7年前比で220万人増えたのに対し、非正規は280万人増えている。消費税大幅減税抜きに賃金、雇用情勢を転換することができようか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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