【マンション業界の秘密】安倍政権終焉、五輪開催は不透明で「都心湾岸マンション神話」崩壊か - zakzak:夕刊フジ公式サイト

記事詳細

安倍政権終焉、五輪開催は不透明で「都心湾岸マンション神話」崩壊か

 長年、不動産市場を眺めていて思うのは、日本人は本当に「不動産が好きだなぁ」ということ。

 われわれは基本的に農耕民族である。地べたをどれだけ所有しているかが、人間の格付けになっていた。江戸時代は一説に、日本国中の地べたの5分の1を支配していた徳川家が、日本の棟梁(とうりょう)だった。

 米国のペリー提督が日本にやってきた時、一体、誰がこの国を代表して条約を結ぶかが問題になった。徳川家は日本国中の武士の主君だけれど、征夷大将軍という官職を京都の天皇から授かって政(まつりごと)を代行しているに過ぎない、という法的な関係がにわかに浮かび上がってしまった。

 ここで江戸の将軍は京都の天皇に「条約を結んでいいですか」とお伺いをたてたり、全国の大名に「意見があったら聞くぞ」というスタンスを取ったことで、「幕末」という騒乱の時代を招くことになる。それがおよそ約15年。

 この時代まで、日本における価値は「米本位制」という状態だった。つまり、すべての価値の源泉は最後に「米の取れ高」のある土地に結び付く。

 諸説あるが、維新を起こした薩摩藩は87万石、長州藩は71万石、土佐藩は24万石。幕府を運営した徳川家は400万石とも言われる。

 石高とはこの米の取れ高である。自分の支配下にどれほどの田んぼがあるかによって人の価値が決まる時代が、日本では有史以来数千年も続いてきた。その最後が徳川家の支配だったのだ。それがほんの150年ほど前まで続いてきたことになる。

 今は「一生懸命」というが、これは元が「一所懸命」である。1つの地所(土地)を得たならば、そこは命を懸けてでも守り抜く、という意味である。

 この精神が、昭和時代の「土地神話」につながる。「土地は絶対に値下がりしない。長く持てばそれだけ多くの富を得る」というのが土地神話だ。

 それは1990年代の平成大バブルが崩壊したことでなくなったことになっている。ところが、その亜流ともいうべき「マンション神話」が令和の世には、はびこっている。「都心や湾岸のタワマン(タワーマンション)を買っておけば値上がりする」というものだ。

 確かに、アベノミクスが始まった2013年以降、都心や城南、湾岸エリアのマンション価格は上がり続けた。13年秋の東京五輪開催決定も、湾岸エリアの不動産市場を沸騰させた。

 しかし、安倍政権は終焉を迎え、五輪開催は不透明なまま。土地神話の亜流で生まれた「都心湾岸マンション神話」は、10年に満たないはかない夢に終わろうとしているのではないか。

 世の中にはこの夢を助長しようとする声もある。いまだに「マンション価格は下がらない」と唱え続けているのだ。

 父祖の代から育んだ土地神話のDNAが、不動産への根強い執着を呼び起こすのかもしれない。

 日本は米本位制から脱却して150年。そろそろ近代的な不動産に対する価値観を持つ時代へと移行すべきではないか。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

関連ニュース

アクセスランキング

×