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【BOOK】まさに江戸時代は罠、前作『渦』を書き終えた後も捕らわれてしまった 浄瑠璃に命を賭ける、近松半二ら実在の人物が登場 作家・大島真寿美さん『結(ゆい)妹背山婦女庭訓波模様』 (1/3ページ)

 「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」。江戸時代、人々は蘇我入鹿の征伐劇を描いたこの人形浄瑠璃に熱狂した。それは浄瑠璃文化を後の世へと引き継ぐため命を賭けた人々の、粋で洒脱な大仕事のたまものだった。今作は、『渦』で161回直木賞を受賞した大島真寿美氏の受賞後第一作だ。 (文・冨安京子)

 

 --舞台は江戸時代の京と大坂道頓堀。登場人物の浄瑠璃作者・近松半二などは実在の人物たち。『渦』の続編ですか

 「新たな連作、でしょうか。それぞれの人物のその後を1話ずつ書いて『オール讀物』で連載して行きました。でも本音は、『渦』を書き終わっても江戸時代が、(登場人物の)耳鳥斎(にちようさい)が頭の中からなかなか消えてくれなくて。いつまでたっても私は江戸時代に長旅をしている感じでした。たぶん耳鳥斎たちが成仏していないからだと思ったんです。何とかしたい、そう強く願ったのが書くきっかけです」

 --タイムトラベルは

 「最終章を書き終わったとたん、すうっと終わりました。『ピエタ』(18世紀のベネチアが舞台)でもそうでしたが、『渦』も『結』も歴史小説を書いている認識はなくて、書きたい時代がたまたまその時代だった。だからでしょうか、ピエタのときは、割とすぐにこちらの世界に還って来ましたが、まさに江戸時代は罠、捕らわれてしまったんですね」

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