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【BOOK】「読者には申し訳ないけど、今度こそ本当に最後です」最終章を大きく改稿 小説家・小林信彦さん『決定版 日本の喜劇人』 (3/3ページ)

 --小林さんが喜劇人にこだわってきたのはなぜでしょう

 「下町の商人の家に生まれたからですね。父親が和菓子屋の9代目で、私も弟も継がなかったので、店はなくなったのです。笑いが大事な家で、ラジオで落語を聞いていても、今ここでオチがついたとか、終わり方がいいとか悪いとか言っていました。山の手の中学校に進学したら、全く文化が違うと感じました。だから、『君が書くしかないよ』と言われたとき、自分が長年実際に観てきたものを生かそうと考えたんですね」

 --これから先、やりたいことは

 「もうそんなに長く生きていないですよ、本当に。ギブアップですね。4年前に脳梗塞を患ったので、もうここ(取材場所)に来るのがやっと。だからこのテーマはもうここまでです。ただ、東京の下町の話は、書きたくなるんですよ。どうしてもね」

 ■『決定版 日本の喜劇人』(新潮社・3960円・税込み)

 東京・東日本橋で生まれ、1940年からロッパ、エノケンを生で見て育った著者が、森繋久彌、植木等、渥美清、由利徹、藤山寛美、萩本欽一など喜劇人について論じた『日本の喜劇人』は72年に上梓されて以来、〈笑い〉をめぐるバイブル的書物としてさまざまなアーティストやクリエイター、ポップカルチャー好きな読者たちに影響を与えてきた。本書は米寿を迎えた著者が全体的に改稿。著者独特のクールで愛情に満ちた眼差しに心を揺さぶられる「決定版」。

 ■小林信彦(こばやし・のぶひこ) 1932年東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。翻訳推理小説雑誌編集長を務めた後、テレビ番組のコントなどを執筆しつつ、作家に。73年『日本の喜劇人』で芸術選奨文部大臣新人賞、2006年『うらなり』で第54回菊池寛賞受賞。『袋小路の休日』『決壊』『日本橋バビロン』『つなわたり』などの小説のほか、『世界の喜劇人』『おかしな男 渥美清』など映画や喜劇人についての著書多数。最新エッセーは『とりあえず、本音を申せば』。

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