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【京都を歩く「ミュジコフィリア」のいる風景】代々住む友人宅での撮影でリアルな生活感 歴史的建造物の非日常と学生マンションの飾らない日常 (1/2ページ)

 第二次大戦での空襲がほとんどなかった京都には、明治期以来の洋風建築も多く保存されている。北白川の疏水沿いにある駒井家住宅もその一つ。1927年に遺伝学の権威で京都帝国大学教授だった駒井卓博士の邸宅として、建築家ヴォーリズの設計で建てられた。『ミュジコフィリア』では、大作曲家の貴志野龍(石丸幹二)と息子で天才作曲家の大成(山崎育三郎)の邸宅として使用した。

 主人公・朔(井之脇海)は大成の異母弟だがクライマックスで兄弟2人がこの家で激しく対立し、そして音楽を通して和解していく。2人がピアノを連弾するシーンはその場にいたスタッフの誰もが涙するほどの深い感動を与えた。井之脇は実際に駒井家に保存されている古いピアノを演奏している。年月を経たピアノの柔らかい響きが兄弟の情愛を彩る。

 撮影に使ったのは寺社仏閣や洋館だけではない。朔とその母(神野三鈴)がつつましく暮らす家は、昔ながらの町家で撮影した。最近は京町家もブランド化して、おしゃれなカフェに改造されたりしているが、今回撮影で使わせていただいたのは、実際に私の友人の元豆腐屋さんが代々住んでいる家だ。大変申し訳ないことにその方には撮影中だけ近くのホテルに泊まっていただいた。おかげでリアルな生活感が画面ににじみ出ている。

 朔の家の前の道は、五条大橋にもほど近い「あじき路地」で撮影した。古い風情の残るこの路地も今は多くの若い芸術家が住む界隈(かいわい)となっている。ちなみに京都では路地を「ろうじ」と読む。

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