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【あの名場面の裏側】G戦士編 天の「タケさん」も喜んだ高橋由伸の同点弾&逆転ホーム (1/2ページ)

 左翼に上がった打球を見ながら高橋由伸は心の中で叫んだ。

 「伸びろ!もっと伸びてくれ!」

 2004年8月21日、アテネ五輪野球の予選リーグ第6戦、日本対台湾の試合でのことだ。

 夏のアテネの午前中はギラつく太陽の光と熱で焼けつくような暑さ。スタンドの観客のほとんどが上半身裸で頭にタオルを乗せている。が、日本代表ナインは暑さなど忘れマウンドの台湾・王健民を凝視した。

 中畑清監督代行率いる日本は宿敵キューバには勝ったものの豪州に不覚をとり、ここまで4勝1敗。予選トップ通過をめざすにはこれ以上の負けは許されない状況だった。

 また、ナイター明けのデーゲームが続くなど選手たちは寝不足で疲れていた。それでも試合前にはベンチに掲げられた「背番号3」のユニホームにタッチしてグラウンドに飛び出した。それは4カ月前に脳梗塞で倒れ五輪での指揮を断念した長嶋茂雄日本代表監督の無念のユニホームだった。

 由伸もなでるように触れた後、日本の方角の空に向かってつぶやいた。

 「タケさん、天から応援してください」-。タケさんとは2年前の8月23日に亡くなった武上四郎巨人打撃コーチ(元ヤクルト監督)で、由伸のルーキー時代から目をかけ、こまめに面倒を見てくれた恩師だ。ちょうど日本時間のこの日、故人の3回忌法要が行われると聞いて、力がみなぎった。

 試合は苦しい展開。3回表に台湾が陳金鋒の3ランで先制する。そしてヤンキースで活躍したエース王健民が150キロの速球と右打者の胸元に食い込むシュートで6回まで日本打線を散発3安打に抑え無失点の力投だ。

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