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【zak女の雄叫び】けなげなハトに感涙 直木賞候補作にも注目を (1/2ページ)

 20日に行われた第164回芥川賞・直木賞の選考会。大衆文芸作品を対象とする直木賞には、西條奈加さんの『心淋し川』が選ばれ、受賞は逃したものの、アイドルグループ「NEWS」メンバー、加藤シゲアキさんの作品が候補にノミネートされたことも話題となった。

 年に2回の選考会が近づくと、私が所属する文化部では、記者が手分けをして候補作を読み、作者に取材する。今回、私が担当したのは、直木賞候補で地球惑星科学の研究者から作家に転身した伊与原新さん。令和元年の新田次郎文学賞を含む3つの賞を射止めた『月まで三キロ』(平成30年刊・新潮社)でも注目された理系作家だ。

 候補作の『八月の銀の雪』(新潮社)は、人生に行き詰まった人々が科学の世界に触れることで、世界の見方を広げ、生き方をとらえ直していく短編集。収録された5つの物語のうち、ハトの帰巣本能をモチーフにした「アルノーと檸檬(レモン)」という作品が、個人的には印象に残った。

 主人公の男は不動産管理会社に勤める契約社員。マンションへの建て替え話が進む古アパートを担当し、立ち退きを拒む高齢女性に手を焼いている。女性の部屋のベランダには脚環のついた迷いバトが住み着いていて、その飼い主を見つけたら、女性は立ち退き交渉に応じるという。足環の文字を手掛かりに、主人公が飼い主探しを始める物語。