記事詳細

【昭和のことば】映像はそのまま真実を映すとどこかで信じていた時代の「ヤラセ」(昭和60年)

 演出かヤラセか。また私たちはこの問題に鈍感になってきてはいないだろうか。

 演出の一線を越えたヤラセが発生し大問題となったのは、この年のワイドショー番組『アフタヌーンショー』が記憶に残る。「激写! 中学女番長!! セックスリンチ全告白」と題された取材映像のリンチ場面が「でっち上げ」であったことが判明し、担当ディレクターが逮捕されるという事態にまで発展した。世間からの非難は相当なもので、番組は打ち切りとなり、「ヤラセ」ということば自体が流行語にもなった。

 この年の主な事件は、「大相撲、横綱北の湖引退」「暴力団山口組竹中正久組長が銃殺される。一和会との抗争激化」「田中元首相自宅で倒れ、東京逓信病院に入院」「男女雇用機会均等法可決成立」「豊田商事永野一男会長刺殺される」「JAL123便、群馬県御巣鷹山に墜落。乗員乗客520人死亡」「三光汽船、会社更生法の適用を申請」「中曽根康弘首相ら閣僚、初の靖国神社公式参拝」など。

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開。トルコの一青年の提言で「トルコ風呂」の名称が「ソープランド」になった。

 テレビの歴史は浅く、視聴者がまだまだ無知あるいは純粋で、映像はそのまま真実を映すとどこかで信じていた時代である。

 昨今でこそ、メディアリテラシー教育の必要性なども叫ばれ、テレビ映像に対する視線や空気は違うが、この「うぶ」な時代に、堂々と「ヤラセ」を持ち込んだマスコミ人の罪は大きい。

 どうせ「ヤラセ含み」だろうという、テレビだけではなく、政治への冷笑的な視点も生んだ、そんな事件だったように思う。 (中丸謙一朗)

 

 〈昭和60(1985)年の流行歌〉 「あの娘とスキャンダル」(チェッカーズ)「ミ・アモーレ」(中森明菜)「恋に落ちて」(小林明子)

関連ニュース