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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】世界で一番深く掘られた穴 地球物理学の常識をくつがえした「コラ半島」の掘削 (2/2ページ)

 ところが、掘っても掘っても、出て来るのは花崗岩質の岩ばかりなのだ。

 世界の科学者はキツネにつままれた。教科書に書いてある事実はおろか、過去の研究方法の権威が問われるほどの事態になってしまったのだ。

 また、地球物理学者が地表のデータから綿密な計算をしていた地下の温度も違った。10キロメートルの深さで100度だったはずが200度もあった。掘削をやめざるを得なかったのも、この高温のせいだ。

 岩の種類も温度も、事前の予想より違った理由は、いまだに分からない。その後、ドイツやスウェーデンで地球物理学のための深い穴掘りが続いたが、いずれも7、8キロメートル止まりだった。この謎は解けないままだ。

 一方、日本では熱心な研究者たちが実現のために奔走した。だがゼニにならない学問だけに費用のメドは立たなかった。

 そんな大金があったら他の科学の振興にまわすべきではないか、1カ所だけに穴を掘るのは、狭いウサギ小屋に巨大なテレビを買うような一点豪華主義ではないか、という批判が強かったのだ。

 世界一深い穴。しかし12キロメートルでも地球の半径のわずか500分の1にすぎない。サッカーボールの縫い目よりも浅い。人類はそれより中のものを見たことも触ったこともないのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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