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【昭和のことば】それぞれが乱雑に騒ぎ立てるさま…作家のユーモラスな観点が加味 てんやわんや(昭和24年)

 作家でユーモアあふれる時代風刺の名手、獅子文六の連載小説のタイトルである。昭和23(1948)年末から毎日新聞で連載した。古くからあることばではあるが、広辞苑によれば、「てんでん」(=各自勝手に)、「わや」(=むちゃくちゃ)が一緒になった造語。それぞれが乱雑に騒ぎ立てるさま、すべてがバラバラで先を争っているさまなどの意に、作家のユーモラスな観点が加味され、この年から流行語として蘇った。

 ちなみに、このことばを借用した漫才師「獅子てんや・瀬戸わんや」は、昭和27(52)年のコンビ結成である。

 この年の主な事件は、「文部省、教科書用図書検定基準を決定」「第3次吉田茂内閣成立」「ドッジ公使、経済安定9原則実施に関する声明発表(ドッジ・ライン)」「東京消防庁、119番設置」「1ドル=360円時代に突入」「日本国有鉄道、日本専売公社発足」「国鉄総裁の下山定則氏、轢死(れきし)体で発見」「三鷹事件、松川事件発生」「湯川秀樹、ノーベル物理学賞受賞が決定」など。

 水泳の古橋廣之進が1500メートル自由形で世界新記録を達成。文学では、三島由紀夫『仮面の告白』が出版。アメリカから、野球チーム「サンフランシスコ・シールズ」が来日した。

 さすがに「てんやわんや」は聞かなくなった。クレージーケンバンドが「てんやわんやですよ」という曲を発表しているが、あれも「時代おくれ」をユーモラスに狙ったニュアンスだ。

 「てんやわんや」は辞書の通り、シッチャカメッチャカで、あまり歓迎される状態じゃない。企業やタスクフォースなら大きな失敗につながりかねない一大事だ。余裕のなさと言ってしまってはなんだが、確かに「てんやわんや」を笑って見過ごせない時代の空気がある。 =敬称略 (中丸謙一朗)

 

 〈昭和24(1949)年の流行歌〉 「トンコ節」(楠木繁夫・久保幸江)「長崎の鐘」(藤山一郎)「悲しき口笛」(美空ひばり)

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