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【東日本大震災から9年半 忘れない、立ち止まらない】人生を破壊する「破傷風」の恐怖 無防備な格好で奉仕作業…決して“美談”にしてはならない (1/2ページ)

 カーテンが翻り、部屋に明るい光が差し込む-そんな平和そのものの光景が、見る者の背筋を凍らせる映画をほかに知らない。昭和55(1980)年に公開された「震える舌」(原作・三木卓、監督・野村芳太郎)の一場面だ。

 実話に基づき、破傷風に侵された幼女の壮絶な戦いをつづったこの映画は、ややホラーチックな面は強いが、感染症の恐ろしさを余さず伝えている。

 映画では、痙攣(けいれん)によって骨が折れんばかりに背中が弓なりとなり、舌をかみちぎるほど歯を食いしばるため、すべての歯を抜かざるを得ないなど、激烈な発作の様子が描かれる。わずかな光刺激や人の笑い声まで筋肉発作の引き金になり、カーテンの隙間から漏れる日光さえも命取りとなりかねない-重症化すれば人生を破壊する、それが破傷風という病だ。

 熊本県の豪雨被害を受けて今年7月、地元の小学生たちがボランティアで片づけをする様子が新聞などで報じられた。

 その一見“尊く見えてしまう”写真を目にした瞬間、私は恐怖のあまり静止した。児童が半袖・半ズボン姿で泥の中に手足を突っ込んでいたからだ。

 「震える舌」は、泥水で遊んでいた少女が、落ちていた釘(くぎ)で指をケガするところから始まる。壊れた家屋の釘、流入した泥の中には、必ず破傷風菌がいるといっていい。

 乳幼児期に混合ワクチンを接種済みの子もいるだろうが、怖いのは破傷風菌だけではない。大雨、洪水後の汚泥には糞尿や多くの有害物質が含まれ、その中で作業にあたることは、大人でも危険が伴う。

 加えて、この新型コロナ渦の中だ。免疫力が弱く、まだ自分では判断も拒絶もできない児童・生徒に無防備な格好で奉仕作業させることを、決して“美談”にしてはならない。

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