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【勝負師たちの系譜】タイトル防衛の難しさ 勢いある挑戦者を抑えてこそ一人前 (1/2ページ)

 例年なら、夏場のタイトル戦は王位戦ただ1つだが、今年はコロナ禍の影響で開始が遅れた名人戦と叡王戦が8月まで伸び、3つのタイトル戦が重なる夏となった。

 一番先に決着がついたのが名人戦。豊島将之名人に渡辺明二冠が挑戦していたシリーズで、渡辺にとって名人挑戦は初めてだった。

 3局目までは豊島が2勝1敗とリードしていたが、第4局で渡辺が薄い玉を中段にうまく逃げて攻めにも使い、勝ち切ったあたりから流れが変わった。

 続く第5局は、渡辺が居玉で四間飛車という斬新な作戦を採り、正に『名人に定跡なし』を地で行く一局だった。

 これも終盤、渡辺は中段に玉を泳がせ、最後は相手の攻めを完全に切らせて勝利した。渡辺の玉使いには、昔から特別なものがあると私は感じている。

 そして勢いのまま3連勝し、初の名人位に就いた。竜王11期の渡辺にして、ようやく掴んだ名人の座である。

 生前、大山康晴15世名人は「タイトルは防衛して一人前」と、常々言っていた。追いかけている時は勢いがあっても、追われる立場になると、つい守りの気持ちが出てしまうということで、勢いのある挑戦者を受け止めるのがいかに難しいかを教えたものだ。

 最近の才能ある若手棋士も、ほとんど1期でタイトルを失っているし、タイトル戦12回、獲得4期の経験豊富な豊島でさえ、まだ防衛はないのだ。

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