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【昭和のことば】戦前から続く昔かたぎの親子のありかた… わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい(昭和43年)

 丸大ハムのCMのことばである。放映が始まったのはこの年だが、ずいぶんと長い間親しまれていたフレーズのような気がしている。

 大自然の中、父親が息子を「鍛え上げ」、たき火の前でつかの間の休息を取る。手にはたき火で炙った厚切りのハム。厳しさとやさしさの同居する「昭和頑固おやじ」と生意気盛りの「わんぱく小僧」。彼らが醸し出す「ちょっといい親子関係」になぜだかみんなが心ひかれた。それだけ、戦前から続く昔かたぎの親子のありかたが揺らぎつつある時期だったのかもしれない。

 この年の主な事件は、「マラソンの円谷幸吉が自殺」「米原子力空母エンタープライズ佐世保寄港」「金嬉老事件」「霞が関ビル完成」「イタイイタイ病を公害病に認定」「十勝沖地震」「小笠原諸島正式復帰」「札幌医大で日本初の心臓移植」「川端康成ノーベル文学賞決定」「3億円事件発生」など。

 学生運動が激化。全国115大学で紛争が発生した。この年の本は、有吉佐和子『不信のとき』、羽仁五郎『都市の論理』。映画『黒部の太陽』が封切り。TV番組では『連想ゲーム』や『巨人の星』が人気となった。また、第19回メキシコ五輪が開催、巷では、サイケデリックやアングラが流行した。

 石原慎太郎の著書『スパルタ教育』がはやるのはこの翌年のことである。厳しくしつけたり寛容の気持ちをうかがわせたり、父親の人知れずの気苦労は今も昔も一緒だ。いまはどんな「方針」がメインストリームなのか。

 体罰ではなく理路整然と教える、できたことは褒める、タブーを作らず小さいうちから学ばせる。おそらくそんなところだろう。片隅の出来事でかまわない。厚切りハムで分かり合える「教育」は永遠でありたい。 (中丸謙一朗)

 〈昭和43(1968)年の流行歌〉 「天使の誘惑」(黛ジュン)「恋の季節」(ピンキーとキラーズ)「星影のワルツ」(千昌夫)

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