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【昭和のことば】お膳をひっくり返したかのような常識破りの発想 グラスの底に顔があってもいいじゃないか(昭和51年)

 往時、子供のこころをわしづかみにした岡本太郎のことばである。キリン・シーグラムのウイスキー「ロバートブラウン」発売2周年を記念したノベルティグッズとして、岡本太郎デザインのグラスが制作された。キャンペーンCMでは岡本自身が登場し、「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」とやった。え? グラスの底に顔? お膳をひっくり返したかのような常識破りの発想、これが芸術というものなのか。当の岡本太郎(大阪万博で実績を残した奇才)だけではなく、誰しもがユーモアや興奮を持って楽しんでいた、そんなCMだったように思う。

 この年の主な事件は、「鹿児島市で五つ子誕生」「ロッキード事件」「映画俳優が小型飛行機で児玉誉士夫宅に突入し死亡」「『四畳半襖の下張』がワイセツ文書で有罪判決(野坂昭如)」「三木おろし表面化、党内抗争に発展」「核拡散防止条約、参議院本会議で批准承認を可決」「新自由クラブ結成」「東京地検、田中角栄前首相逮捕」「ソ連のミグ25戦闘機(操縦士ベレンコ中尉)、函館空港に強行着陸」「鬼頭史郎京都地裁判事補・ニセ電話事件が表面化」「山形県酒田市で大火」「福田赳夫内閣成立」など。

 スポーツでは、第21回モントリオール五輪に参加。具志堅用高が、WBAジュニアフライ級世界選手権を獲得した。

 遊び心。芸術をそんなことばで終わらせてしまうのは安易すぎるのかもしれない。料理を作っているときにつまみ食いする切れ端やスープはおいしい。「ほんとうはお行儀悪い」というかすかなためらいが、より味わいを深くする。計算され尽くした美しさもそれはそれでよいが、まさに爆発するかのように生まれたグラスの底の顔は、いつまでもこころに残る。=敬称略(中丸謙一朗)

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