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【昭和のことば】きっかけは…女優・應蘭芳「私って失神しちゃうの」 失神(昭和43年)

 今の時代ならいささかナーバスなことばではあるが、おおいにはやった。(やや性的なニュアンスを含んでの)人々の対象に対する「熱狂」「狂乱」を表すことばである。

 きっかけは、「私って失神しちゃうの」と自身の性生活を語った女優の應蘭芳(おう・らんふぁん)のインタビューだった。以降、このエクスタシーを意味する「失神」ということばが一人歩きをし、應蘭芳は「失神女優」と呼ばれ、官能小説の大家・川上宗薫は「失神作家」、熱烈なファンを持つグループサウンズ・オックスは「失神歌手」と言われた。

 この年の主な事件は、「マラソンの円谷幸吉が自殺」「米原子力空母エンタープライズ佐世保寄港」「金嬉老事件」「半日共系学生、東大安田講堂を占拠」「霞が関ビル完成」「イタイイタイ病を公害病に認定」「十勝沖地震」「小笠原諸島正式復帰」「札幌医大で日本初の心臓移植」「川端康成ノーベル文学賞決定」「3億円事件発生」など。

 学生運動が激化。全国115大学で紛争が発生した。この年の本は、有吉佐和子『不信のとき』、羽仁五郎『都市の論理』。映画『黒部の太陽』が封切り。テレビ番組では『連想ゲーム』や『巨人の星』が人気となった。また、第19回メキシコ五輪が開催。巷では、サイケデリックやアングラが流行した。

 失神だの卒倒だの「しびれる」(1958年の流行語)だの、熱狂や興奮を表すことばが次々と生まれてきたが、現在の高齢化社会ではおいそれとは使えない。そういう意味でも、時代は、そして、我々はあまりにも若かったのかもしれない。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和43(1968)年の流行歌〉 「天使の誘惑」(黛ジュン)「恋の季節」(ピンキーとキラーズ)「星影のワルツ」(千昌夫)

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