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【昭和のことば】日本人の夢やあこがれを映し出す「外来語」 バカンス(昭和38年)

 ザ・ピーナッツの歌う『恋のバカンス』は幅広い世代に知られる名曲だ。この歌のヒットは昭和38(1963)年。そしてこの年、題名の背景となった「バカンス」ということばもおおいに流行した。

 もともとは休暇を意味するフランス語。前年にヒットしたイタリア映画『狂ったバカンス』をイメージして、東レが「バカンス・ルック」と名付けたリゾートに似合う夏服を売り出したのがきっかけである。その後も、この流れは続き、バカンス・バッグ、バカンス・チェアなど、関連の商品が次々と発売された。

 この年の主な事件は、「国産テレビアニメ第1号『鉄腕アトム』放送開始」「人口105万人の新都市、北九州市が発足」「吉展ちゃん事件発生」「大阪駅前に日本初の横断歩道橋完成」「瓶詰め生ビール、サントリービール発売」「黒部川第四発電所(黒四ダム)完工式」「政府主催の第1回全国戦没者追悼式開催」「米原潜寄港反対集会を横須賀・佐世保で開催」「三井三池鉱業所三川鉱で大爆発」「プロレスラー力道山、やくざに刺され死亡」など。

 この年の映画は『五番町夕霧楼』『アラビアのロレンス』。大鵬が大相撲初の6場所連続優勝。経済企画庁は、『経済白書〈先進国への道〉』を発表。まさに高度経済成長時代のはじまりを告げる時代であった。

 似たような用語として「バケーション」がある。これも流行歌などで盛んに取り上げられた。このことばの方がポップではあるが若干健康的に過ぎると感じるのは、これもまた流行歌の影響だろうか。

 次々と流行した「長い休暇」を表すことば。日曜日と盆暮れがつかの間の休息。まだまだ発展途上で働きづめの日本人の夢やあこがれを映し出すかのような「外来語」である。(中丸謙一朗)

 〈昭和38(1963)年の流行歌〉 「高校三年生」(舟木一夫)「こんにちは赤ちゃん」(梓みちよ)「見上げてごらん夜の星を」(坂本九)

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