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内定辞退セットに賛否両論 心のこもった「就活謎マナー」が企業にとっても大迷惑な理由 (4/5ページ)

 ◆就活謎マナーその2:つらいことがあってもすぐに辞めるのはNG

 「どんな会社でも最初は大変なことばかり。まずは与えられた環境で頑張りましょう」

 「石の上にも3年といいます。すぐ辞めてしまうと『辞めグセ』がつきますよ」

 このアドバイス自体には、確かに一理ある。どんな優良企業に入ったところで、相性の合わない上司につくこともあるし、仕事の進めかたや人間関係の対処についてもある程度場数を踏んでおかないと、転職先においても同じような悩みを抱えることになりかねない。

 しかし、入った先が明らかに悪意のある違法なブラック企業なら話は別だ。そういった会社で労働者はまともな教育を受ける機会もなく、単なる「コマ」として使いつぶされ、場合によっては違法行為の片棒を担がされてしまうこともある。頑張ったところで身につくのはせいぜい「理不尽な環境への耐性」程度であり、労働市場で生かせるようなスキルは得られないだろう。「今いるところはそもそも座る価値のある“石”なのか?」と確認し、もしそうでなければ、貴重な人生を無駄にすることがないよう、早めに辞める判断をすることも重要なのだ。

 ちなみに、一度転職してしまうと次に転職する際の心理的なハードルが下がることは確かである。それを「辞めグセ」と表現することもできるが、個人的には「嫌なら辞めればいい」という安心感、とポジティブに表現したいところだ。もう後がない……と悲壮な覚悟で仕事するよりはよっぽど健康的だろう。ゲームで例えるならば、失敗してもまた復活できる「残りライフ」が増えるようなイメージである。仕事はあくまで人生の一部でしかない。それくらい気軽に考えてもいいのではなかろうか。

 ◆謎マナーが企業をむしばんでいる

 よくよく考えてみれば、求人サイトも入社後のマナー研修も、お金を出すのは企業側だ。紹介したような、企業にとって都合のいい忖度が「マナー」という形で代々伝えられていく構図はブラック企業がいまだになくならないこの国でなるべくしてなったものであろう。しかし「稟議書の捺印(なついん)は上司に向けて傾ける」とか「宴席のお酌におけるとっくりの注ぎ口の向き」など、何ら本質的とはいえないマナーにこだわり過ぎてしまうことで、かえって業務効率や生産性を下げているなら本末転倒だ。

 企業側のデメリットという点では、先述した2つの「謎マナー」も同様にリスク要因になり得る。待遇や休日について確認しないまま入社した従業員が、労働環境が給与の割に合わず、「こんなはずじゃなかった……」と早期離職に至ってしまう可能性がある。それだけでなく、つらい環境に無理やり耐えることで心身ともに疲弊してしまい、病気や休職につながったり、「株式会社××は滅私奉公を強要し、辞めさせてくれないブラック企業です」などとネガティブな口コミが転職サイト上で拡散したりしてしまうかもしれないのだから。

ITmedia ビジネスオンライン

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