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【昭和のことば】おしゃれで黒ずくめのおかっぱアタマのお姉さんたち ハウスマヌカン(昭和61年)

 うちの父親は、このことばがテレビで流れるたびにわたしに向かい、「ハウスマヌケか?」と言って若者をからかった。なんとも失礼な言い草であるが、とっくに鬼籍に入っているので笑って容赦願いたい。

 ハウスマヌカンとは、当時人気の頂点にあったアパレルブランドのショップなどで働いている、おしゃれで(当時のファッションを反映し)黒ずくめのおかっぱアタマのお姉さんたちを指すことばだ。売り子さん、店員さんなどと呼ばれていたものを、女性誌が「カタカナ職業」に持ち上げ、あっという間にブームになった。

 この年の主な事件は、「レーガン米大統領が対リビア経済制裁発表」「スペースシャトル『チャレンジャー号』爆発事故、乗組員全員死亡」「フィリピンのマルコス大統領が国外脱出、アキノ大統領が就任(エドサ革命)」「チェルノブイリ原子力発電所で大規模な爆発事故発生」「東京・港区にアークヒルズが完成」「レイキャビクでレーガン大統領とゴルバチョフ書記長が会談(米ソ首脳会談)」など。

 この年の映画は、「天空の城ラピュタ」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「トップガン」。本は『化身』(渡辺淳一)、『最終便に間に合えば』(林真理子)。角界では、新人類力士・北尾光司が横綱に昇進した。

 当時の「カタカナ職業」は特権的であり、また揶揄(やゆ)の対象でもあった。給与の違いこそあれ、各職業の階層的な差別は(いまほどには)感じられず、それぞれの分野で人々が生き生きと働こうとしていた。人件費、労働力、非正規社員などのことばが連呼される前の時代。人間らしく自由に生きていこうとする、かすかだが、そんな時代の空気があった。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和61(1986)年の流行歌〉 「CHA-CHA-CHA」(石井明美)、「DESIRE」(中森明菜)、「仮面舞踏会」(少年隊)

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