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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】津波が運ぶ“死亡率10%”の感染症「クリプトコックス症」 (2/2ページ)

 その大地震とは、64年のアラスカ地震。マグニチュード(M)9・2。米国の地震観測史上で最大、世界でも最大クラスの地震だった。この地震からの津波は、カナダ西岸・バンクーバー島や米国西岸の広い地域の沿岸部と内陸に達した。南部カリフォルニア州でも津波で12人が死亡した。日本でも岩手・大船渡で90センチの高さが記録されたほか、三重・志摩半島ではカキの養殖いかだが流された。

 この津波によって、菌は砂地や木々が広がる陸地へと運ばれた。そしてアメーバや土壌生物が作用して、人や生物へのより強い病原性を持つクリプトコックス菌の「変異体」が誕生して感染力や病原性が増したのではと考えられている。

 津波が運んだという学説ならば、時間の空白が埋められる。

 じつは、クリプトコックス菌がいるのは南米だけではない。オーストラリアやパプアニューギニア、欧州やアフリカなど世界中の温暖な地域にも分布している。

 北米大陸西岸では地震から5年後に初めて人への感染が確認された。それゆえ、今後数年の間に、アラスカ地震だけではなくて、2004年のスマトラ島沖地震(M9・3)や11年の東日本大震災(M9・0)による大津波の影響で、別の地域に、いままでにない感染症が出現するのではないかと恐れられている。地震の津波で陸上に上がった菌が有害な「進化」をしているかもしれないのだ。

 津波はもちろん大きな災害だ。だがその他に、病気を運んでくる恐れも指摘されているのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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