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【昭和のことば】「調子がいい」をひっくり返したジャズマンの楽屋言葉 C調(昭和37年)

 調子のいいこと。それをひっくり返して「C調」と言った。明るい曲調のハ長調(=C調)に引っ掛けたジャズマンの楽屋言葉だった。

 業界で使われてきたことばが、この年の映画、クレージーキャッツの植木等主演『ニッポン無責任時代』の劇中歌で使われ(作詞・青島幸男)、一気に流行語となった。世代のズレで言えば、このことばの流行から遅れて17年後、サザンオールスターズ『C調言葉に御用心』が発売され、死語になりかかっていたこのことばを多くの若者が知ることになった。

 この年の主な事件は、「東京が世界初の1000万人都市へ」「日本電気、国産初の大型電子計算機発表」「テレビ受信契約者数1000万人突破」「東京・常磐線三河島駅構内で二重衝突、死者160人、重軽傷325人」「大日本製薬、サリドマイド系睡眠薬の出荷停止(サリドマイド事件)」「堀江謙一、小型ヨットで太平洋を横断、サンフランシスコに到着」「三宅島、22年ぶりの大噴火」「北九州・若戸大橋開通」など。

 この年の映画は『キューポラのある街』。本は、北杜夫の『楡家の人びと』、司馬遼太郎『竜馬がゆく』。テレビでは、『てなもんや三度笠』やアメリカのドラマ『ベン・ケーシー』がはやった。国鉄スワローズの金田正一が3509奪三線の世界新記録樹立。経済成長の半面、薬害や偽札などで社会が揺れた。

 高度経済成長期の淡い期待や浮ついた気持ち、やってもやっても終わりの見えない毎日に対するなげやりな気持ち。下を向かないで「C調(調子の良さ)」で乗り切ろうというのが、当時のサラリーマンの共感を呼んだ。昭和のことばのなかでも有数のキラキラしたことば。わたしにはそう思えている。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和37(1962)年の流行歌〉 「可愛いベイビー」(中尾ミエ他)「王将」(村田英雄)「いつでも夢を」(橋幸夫、吉永小百合)

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