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【昭和のことば】簡略的に「乱雑さ」と捉えられるが… エントロピー(昭和58年)

 エントロピーとは、物理学用語で「熱力学」の説明の際に用いられ、「秩序あるものはすべて無秩序へと移行する」法則を、「エントロピーが増大する」というように表した。簡単には解説しきれない概念だが、ことばだけがひとり歩きし、一般の社会現象に対して比喩的に使うことばとしてはやりだした。

 エントロピーは簡略的に「乱雑さ」と捉えられるが、まさにこの時期、はっきりと意識されるようになった世間一般の「価値観の多様化」に、足並みを揃えたかのようなことばとして定着した。

 この年の主な事件は、「中川一郎自民党代議士、急死」「中曽根康弘首相訪米、日米は運命共同体との認識表明」「横浜市浮浪者連続殺傷事件で、中学生を含む10人逮捕」「中国自動車道全通」「東京ディズニーランド開園」「戸塚ヨットスクール校長、傷害致死容疑で逮捕」「第13回参議院議員選挙、全国区は初の比例代表制導入」「死刑囚再審の免田事件で初の無罪判決」「銀行などの金融機関、第2土曜日休日制実施」「大韓航空機、ソ連空軍機に撃墜され269人全員死亡」「東京地裁、ロッキード事件判決公判で田中角栄に懲役4年の実刑判決」「静岡県掛川市のレクリエーション施設『つま恋』でプロパンガス大爆発」など。

 この年の映画は『戦場のメリークリスマス』(大島渚監督)。テレビドラマでは『おしん』が大ブームになった。

 横文字の学術用語が流行語になるようなちょっと乾いた「洒落っ気」も、この昭和後期の特徴だった。みんなが豊かになりみんなの「知」が向上している、そんな時代の気分だったのかもしれない。

 この数年後には、曖昧さ、不確かさを表すサイエンス用語「ファジー」が流行することになる。(中丸謙一朗)

 〈昭和58(1983)年の流行歌〉 「矢切の渡し」(細川たかし)「めだかの兄妹」(わらべ)「さざんかの宿」(大川栄策)

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