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【昭和のことば】“切り取られ”発言の元祖 貧乏人は麦を食え(昭和25年)

 桜田義孝五輪担当相の「がっかりした」発言が話題になった。闘病を告白した競泳選手に向けられたことばだが、取材テープの全編を眺めてみるとそれほどの違和感はなく、失言を「切り取られた」かたちになっていることなどが、ネットでも話題になっていた。

 この「切り取られ」発言の元祖ともいうべき、そしてまた最大の破壊力を持っていたことばが、これである。細かく説明している字数はないが、この池田勇人蔵相(当時)の発言は、「貧乏人は麦でも食ってろ」という弱者切り捨ての発言ではない。「所得の少ない人は麦を多く食う、所得の多い人は米を食うというような、経済の原則にそった方へもっていきたい」と述べたのである。

 この年の主な事件は、「1000円札発行」「自由党結成(総裁・吉田茂)」「静岡県熱海市で大火」「公職選挙法公布」「山本富士子、第1回ミス日本に選出」「炭鉱国営終わる」「朝鮮戦争勃発」「最高検、『チャタレイ夫人の恋人』押収を指令」「金閣寺全焼」「日本労働組合総評議会(総評)結成」「レッドパージ始まる」「NHK、定期実験テレビ放送開始」など。

 この頃の物価は、たばこ「ピース」が50円、理髪料は60円。朝鮮特需景気が起こり、巷にはアルバイトサロン(アルサロ)が登場した。

 文意を簡潔に伝達する際の正解というのはなかなか定めにくい。暴言への監視は大事だ。だからといって、第4の権力という名をほしいままにしているマスコミが、偏向報道によって政権をもてあそぶようなことは不健全である。

 ことばは、古くても新しくても「時代背景」をまとっている。このことは案外忘れがちになる。(中丸謙一朗)

 〈昭和25(1950)年の流行歌〉 「水色のワルツ」(二葉あき子)「白い花の咲く頃」(岡本敦郎)「買物ブギー」(笠置シヅ子)

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