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【昭和のことば】サブカルの“総元締め”渡辺和博のヒットコピー ◯金◯ビ(昭和59年)

 元『ガロ』の編集長であり、元祖ヘタウマのイラストレーター、サブカルの総元締めともいうべきコラムニスト、渡辺和博のヒットコピーである。コラムニストの神足裕司と組んだ書籍『金魂巻』はこの年のベストセラー。ファッションや振る舞いで、さまざまな業界の「金持ち」と「貧乏」を、おもしろおかしく二項化し、渡辺はイラストを担当した。

 この年の主な事件は、「三池有明炭鉱火災、死者83人」「『週刊文春』“疑惑の銃弾”報道開始。三浦和義、報道を人権侵害として法務局に申し立て。翌年逮捕」「植村直己、北米大陸最高峰マッキンリー冬季単独登頂成功し、下山途中に消息不明」「報徳会宇都宮病院で看護人による患者2人リンチ致死事件発覚」「グリコ事件発生」「東京高裁、ロッキード事件の小佐野賢治、議院証言法違反で有罪判決」「ロサンゼルス五輪開催」「『投資ジャーナル』グループ摘発で、強制捜査」「全斗煥韓国大統領来日」「オーストラリアからコアラ6匹、成田到着」「新札発行(1万円、5000円、1000円)」「第3次中曽根改造内閣発足」など。

 この年の映画は『お葬式』『麻雀放浪記』。岡本綾子が米ゴルフツアーJ&Bで優勝。浅田彰の『構造と力』が流行し、巷では酎ハイブームが起こった。

 「一億総中流」の空気が残る昭和後期。この「金持ち・貧乏ごっこ」には、どこかほのぼのとした趣があった。もちろん、それはのちに訪れる「勝ち組・負け組」という辛辣(しんらつ)な言葉に対しての比較だ。◯金だろうが、◯ビだろうが大差ない。それでも、かっこつけたりヤキモキしたり。こんなメッセージがまだまだ優しかった昭和のことばである。=敬称略

(中丸謙一朗)

 〈昭和59(1984)年の流行歌〉 「ワインレッドの心」(安全地帯)「ジュリアに傷心」(チェッカーズ)「娘よ」(芦屋雁之助)

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