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【部下がついてくる!「角栄流」上司の心得】日米繊維交渉で見せつけた「弁舌能力」 (1/2ページ)

★交渉術の極意(2)

 あらゆる交渉事を左右するのは「弁舌能力」である。弁舌能力とは、もとより単に“口がうまい”ということではない。交渉事の経緯、歴史を熟知して、相手の狙い、思惑がどこにあるのかを見抜く。そのうえで相手を論破し、自らの落とし所に着地させる能力を指す。

 田中角栄における、そうした弁舌能力の白眉は、彼が首相の座に就く直前のポストであった通産相時代、懸案の日米繊維交渉に見られた。

 時に、米側は「米国全体の貿易収支が悪化しているのは、突出した対日貿易赤字のせいだ。特に、日本製繊維は対米輸出の中では容認できない」と強硬だった。現在の米側が迫っている「貿易不均衡是正」と、極めて似た状態だった。

 田中通産相の前の、宮沢喜一、大平正芳の両通産相は、この繊維交渉を1ミリも前進させることができなかったのである。

 しかし、田中は通産相に就任するや、わずか3カ月足らずで、緩急自在の交渉術で、この難題を解決してみせたのだった。

 過去の交渉経緯を分析し、交渉相手の手ごわいデビッド・ケネディ大統領特使と渡り合った。得意の数字を連発、「貿易は複数国を相手にするもの。黒字の相手もあれば、赤字の相手もある。日本は米国に対して黒字でも、産油国に対しては赤字だ。米国だって同じではないか。2国間で常にバランスを取るという考え方には無理がある」などと突っぱねたのである。米側は不満だった。

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