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【昭和のことば】根が深く、危険性に気づきにくい「ながら族」(昭和34年)

 社会問題になりつつある「歩きスマホ」だが、とうとう死者まで出ている。単にやっている個人の歩く速度が落ちるぐらいならたいしたことはないが、他人に対して多大な迷惑をかけるとなると、もはや見過ごせない。

 歩きスマホの縁戚にあたるようなことばが、この「ながら族」である。いまから60年近く前のこの当時、テレビを見ながら宿題をやる小学生、好きな音楽を聴きながら英単語を覚える受験生などが、話題になった。

 この年の主な事件は「第三次南極観測隊、昭和基地に置き去りにされた樺太犬『タロ・ジロ』の生存を確認」「東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑完成」「皇太子ご成婚、ミッチー・ブーム頂点に」「国民年金法公布」「日産自動車、ダットサン・ブルーバード発売」「台風15号、中部地方を襲う。死者5041人、被害家屋57万戸(伊勢湾台風)」「水俣病問題で漁民1500人、新日本窒素水俣工場に乱入、警官隊と衝突」「学童の交通整理に緑のおばさん登場」など。

 この年の映画は『荷車の歌』『野火』。本は『にあんちゃん』(安本未子)、『海辺の光景』(安岡章太郎)など。テレビでは『スター千一夜』『ローハイド』が流行。街では爆音をあげてバイクを疾走させるカミナリ族が横行した。

 その後、1970、80年代にも、ラジオの深夜放送などを聞きながら受験勉強をした人々がずいぶんといた。筆者もそのひとりだ。一度にいくつものことができる、あるいは「できると錯覚する」、そんな考えもいい年になれば、若気の至りだということに気付かされる。

 「ながら族」の根は深い。なかなかその危険性に気が付かないのである。(中丸謙一朗)

 〈昭和34(1959)年の流行歌〉 「南国土佐を後にして」(ペギー葉山)「黒い花びら」(水原弘)「黄色いさくらんぼ」(スリー・キャッツ)

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