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「死者続出マンション」が生んだ北朝鮮国民の抗議活動 (3/3ページ)

 住民たちは「人民委員会が解決しようとしないのならば、中央党(党中央委員会)に信訴する」と脅かしている。これに対して人民委員長(市長)は、住宅課に速やかな解決を指示した。

 情報筋は触れていないが、マンション建設の資金を提供するほどの財力を持ち、人民委員会に圧力をかけられるほどの住民は、一般庶民ではなく幹部やトンジュ(金種、新興富裕層)など、それなりの社会的地位や強力なコネを持っている人たちだろう。

 また、かつて抗議活動は命がけの行為だったが、今はそれほどでないもようだ。

 (参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

 人民委員長からの指示に、人民委員会住宅課は困り果てている。朝鮮労働党両江道委員会の幹部からマンションの入居権を取り上げるわけにもいかず、だからと言って人民委員長に従わなければ、最悪の場合、中央党の検閲(監査)を受け、クビが飛びかねないからだ。

 そもそも党幹部らは、中国の吉林省長白朝鮮族自治県の中心部と向かい合い、開発が進められている市内北部の渭淵洞(ウィヨンドン)の10階建てのマンションに入居する権利を持っていた。

 しかし冒頭で述べたとおり、北朝鮮の建設現場では手抜き工事が横行している。渭淵洞の現場はそれが特にひどいらしく、「セメントでできた壁をすっと撫でるとボロボロと崩れ落ちる、塊で落ちるのもある」(情報筋)ことから、幹部らは入居権を返上してしまった。代わりにあてがわれたのが、恵長洞の新築マンションというわけだ。

 (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

 夢の新築マンションを奪われた住民たちは、一向に引き下がる姿勢を見せていない。前述の脱北者は「住民に理があり、人民委員会の責任は大きい。抗議されても押さえつけるのは難しい。信訴を受け入れる形となるだろう」と見ている。

デイリーNKジャパン

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