記事詳細

【日本の元気】ノーベル賞候補の始まりはラジオ少年 香取秀俊さん「光格子時計」で新たな挑戦 (1/2ページ)

 今年のノーベル物理学賞は、アメリカ、フランス、カナダの3人のレーザー物理学の研究者に授与された。同賞で有力候補とされていた日本人のお2人、十倉好紀さん(理化学研究所=理研、創発物性科学研究センター長)と香取秀俊さん(理研・香取量子計測研究室主任研究員、東京大学教授)は、昨年3月に出版した拙著『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』(講談社)で紹介したこともあり、受賞の報を心待ちにしていただけに、ちょっと残念だった。

 その受賞者発表があった2日の午後11時過ぎ、香取さんは東京スカイツリーで、ある作業を始めていた。ノーベル賞候補理由である「光格子時計」2台を、1階と高さ445メートルの天望回廊に設置するためだ。光格子時計は宇宙開闢(かいびゃく)のビッグバンから現在までの138億年でわずか0・5秒の狂いしか生じない、とんでもなく精密な原子時計だ。

 アインシュタインは相対性原理で、測定する場所の重力の違いによって時間の進み方に差が出ると予測したが、香取さんは光格子時計でその「時間差」の測定に成功しているのだ。ごく簡単に言うと、平地にいる人と山の上にいる人が受ける重力(引力)の大きさは異なる。体感することはできないが、平地の方は大きく山の上では小さい。その重力場の差によって、時間の進み方に差が出るのだ。

 たとえば、東京都文京区の東京大学と埼玉県和光市の理研は標高差が約5センチだ。たった5センチだが地球から受ける重力はごくごくわずかある。香取さんは、その5センチの重力差によって「時間の進み具合が違う」ことの観測に成功。そこでさらに、スカイツリーで精密に観測する挑戦を始めたのである。

 理研、光量子工学研究領域長の緑川克美さんは「光格子時計は世界の20グループが取り組んでいるが、香取チームはトップ。世界標準時の定義に採用される可能性が高い」と語っていた(拙著)。

関連ニュース