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【緊迫する世界】トランプ氏「米朝首脳会談中止」で恫喝も…危惧される「あいまいな合意」 (2/2ページ)

 この直後、韓国の文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐官は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に、平和協定締結後は「在韓米軍の駐留を正当化しにくくなる」と寄稿した。

 韓国大統領府は「政府見解ではない」と火消しに追われたが、米国とすり合わせの上に発表された観測気球の可能性が十分ある。

 現に、ニューヨーク・タイムズは5月3日、「トランプ氏が、在韓米軍の規模削減を検討するよう国防総省に指示している」と報じた。平和協定締結となれば国連軍は解体され、米韓連合司令部の作戦統制権は韓国に戻される。米朝友好条約が締結され、北朝鮮が米韓の脅威でなくなれば、約2万8000人の在韓米軍の存続意義は喪失する。

 米朝首脳会談について、ダニエル・ラッセル元米国務次官補は、トランプ氏と正恩氏は「核・ミサイル問題」だけでなく、平和協定や国交正常化、経済支援など幅広いテーマを議題とするだろうと推測している。

 米朝が「あいまいな合意」をした場合、米本土に到達する大陸間弾道弾(ICBM)は廃棄されるが、北朝鮮の現有する10~15発の核と、日本に到達する中距離弾道ミサイル(IRBM)は温存される危険がある。

 日本は、北朝鮮の「核の脅威」におびえることになる。「独自核武装への道」しか選択肢がなくなる可能性も否定できない。トランプ氏が踏ん張りきれなければ、日本にとって「最悪のシナリオ」となる。

 ■川上高司(かわかみ・たかし) 1955年、熊本県生まれ。拓殖大学海外事情研究所所長。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書に『「新しい戦争」とは何か』(ミネルヴァ書房)、『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社)など。