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【日本の選択】北の非核化への動きを容易に信用してはならない 過去何度も国家間合意を破棄 (1/2ページ)

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 ドイツの哲学者、ヘーゲルは「歴史は繰り返す」と主張した。これに対し、同国の哲学者で思想家のマルクスは、歴史の繰り返しを肯定しながら、「1度目は偉大な悲劇として、2度目はみじめな笑劇として」と付け加えた。

 マルクスの言葉をぼんやりと思い出したのは、ドナルド・トランプ米大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談が行われるとのニュースを目にしたときだった。

 正恩氏は「今後は核実験と弾道ミサイル発射を自制する」との意向を表明したとも報じられた。

 だが、こうした言葉をうのみにするのは愚かであり、危険なことだ。重要なのは「非核化する」という言葉ではなく、朝鮮半島の「非核化」そのものだ。

 1993年から94年にかけ、北朝鮮の核開発疑惑が深まった。このとき、クリントン米政権のウィリアム・ペリー国防長官は戦争を辞さない覚悟で北朝鮮との交渉にあたった。北朝鮮の動向次第では、実際に第2次朝鮮戦争が勃発しかねない危険な状況にあったのである。

 だが、米国は、本音では「戦争を回避したい」と考えていた。そのために、北朝鮮に対して戦争も辞さないとの圧力をかけながら、一方で戦争を回避すべく外交交渉にあたっていたのだ。

 結果として、戦争は回避することができ、北朝鮮の非核化を含む「米朝枠組み合意」が結ばれた。そして、一定期間、この米朝枠組み合意は有効だった。こうした状態が続けば、歴史に残る素晴らしい外交交渉だったといえるだろう。

 しかしながら、約束は踏みにじられた。