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【秘録 今明かす「あの時」】福島第二原発の過酷事故を止めた懸命の30時間作業 通常なら機械を使い1カ月かかる難業 (2/2ページ)

 増田氏は的確な臨機の指示を出した。

 直線距離で800メートル離れて残った外部電源から海辺の建屋まで、約200人もの社員と関連会社の社員の人力でケーブルを担ぎつなげた。ケーブルは太さ5センチほどで大変重い。建物を迂回(うかい)したり、上下があったりして、総延長は9キロメートルにもなった。通常なら機械を使って1カ月かかる作業を、13日深夜まで30時間で成し遂げた。その電力を使って注水し冷却ができた。

 1号機は加熱して圧力が高まっており、あと数時間遅れれば原子炉内にたまった蒸気を外部に放出する「ベント」を決断せねばならないほど、切羽詰まった状況だった。

 増田氏は今、東京電力ホールディングスの常務執行役で、福島第一廃炉推進カンパニーのプレジデント(最高責任者)だ。

 「原発の安全で想定外は許されない。昨日よりも今日、今日よりも明日、より安全にするよう日々改善を進める。安全追求に終わりはない。私も社員も、以前にもましてそう意識するようになりました」

 福島第二原発が過酷事故を免れた理由は、電源が残った幸運が影響したかもしれない。しかし、それは理由の一部にすぎない。状況をより強く安全に結びつけた、責任者の的確な判断と人々の頑張りがあったのだ。

 ■石井孝明(いしい・たかあき) 経済・環境ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌記者を経て、フリーに。著書に『京都議定書は実現できるのか』(平凡社)、『気分のエコでは救えない』(日刊工業新聞)など。

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