記事詳細

【新書のきゅうしょ】「ソフィスト」「諸子百家」の後継がひろゆき? 野崎昭弘著「詭弁論理学」(中公新書、1976年) (1/2ページ)

 テレビで討論する番組の歴史を振り返ると1980年代後半以降、田原総一朗による「朝まで生テレビ!」と「ビートたけしのTVタックル」あたりがパイオニアか。

 現在、圧倒的に面白いと思うのがネットテレビABEMAで平日夜放送される「ABEMAPrime」である。特にパリ在住のひろゆきがリモート出演してMC役をこなす金曜日。「コロナ」「リベラル」などその時々のテーマに強いパネリストが数人登場してひろゆきが加わる構成だ。しかし、彼がひとたび、画面の向こうから「根拠ナシで喋るのやめてもらえますか?」「頭の悪い人が頭の悪い提言している感じにしか見えないんすよねえ」と迫ると議論は一瞬で詰んでしまう。

 ひろゆきの一番の強みは他人の発言の論理矛盾をすばやく指摘して、さらしものにしてしまう点。論敵に具体的な論拠を求め、自身は反証データを即提出して「それ、知らないんですか?」と迫るシーンは、まるでドラマのクライマックスを見るよう。たとえ自身が反対派の意見に与(くみ)していても、彼らが追い詰められるのを見るとなぜかわくわくする。

 私がかつて広告会社に勤務していた頃、マーケ、クリエイティブなどのオールスタッフ会議では、いかにエッジの利いたコメントを繰り出すかがポイントだった。私はその手の発言が本当に苦手だったのもあり、ひろゆきのような人物には嫉妬と共に憧れも感じてしまう。むかし、『詭弁論理学』に手を出したのもそんな気持ちがあったからだろう。著者の野崎昭弘自身、議論下手でその克服のために書いたとはしがきにある。

関連ニュース