記事詳細

【長田昭二 ブラックジャックを探せ】超早期での膵がん発見を可能に JA尾道総合病院診療部長・内視鏡センター長の花田敬士さん

 がんの中でも最も治療成績の悪い「膵がん」。自覚症状もなく進行するため早期発見が難しく、見つかった時には手遅れ-ということが珍しくない重大疾患だ。

 「5年生存率」を見ると、比較的予後のよくない肺がんや食道がんでも40%台なのに対して、膵がんのそれは10%前後にまで落ちる。

 そんな膵がん治療で、日本はおろか世界的にも類を見ない好成績を残しているのが、広島県尾道市にあるJA尾道総合病院。その中心人物が同院内視鏡センター長の花田敬士医師だ。

 地域の開業医たちとタッグを組み、微小な異変でも見つけたら花田医師の病院に患者を送ってもらう強力なネットワークを構築した。早期発見が困難だった膵がんの「超早期」ともいえる「ゼロ期」での発見を可能にした。これにより、尾道市における膵がんの5年生存率は約20%と、全国水準をはるかに上回る好成績を残している。

 研修医時代、「最も治療が難しい領域に進もう」と考えた。候補に挙がったのは、白血病と膵がん。

 「当時はどちらも治療成績がよくなかった。それも、白血病には新薬が出る気配があった。ならば膵がんを選ぼうと…。道なき道を歩くのが性に合っているので」

 大学院では膵炎からがんができ上がっていく仕組みの解明に取り組んだ。仮説を立て、実験を重ねて証明したその論文は、世界的な雑誌にも載った。

 「あのまま研究者になってもよかったとは思います。でも、研究室で学んだことを臨床で生かせることが、今は楽しい」と笑顔を見せる。

 一つの事象を多角的に見つめ直し、徹底的に考え抜いて実行に移す。臨床医の視点と研究者の思考が融合し、地域を動かし、膵がんの治療成績を動かし始めたのだ。

 自身の生まれ故郷でもある「尾道」という地名を、世界の膵臓医に知らしめた花田医師。その挑戦は次の段階に進もうとしている。(長田昭二)

 ■花田敬士(はなだ・けいじ) 1963年、広島県尾道市生まれ。88年、島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。現在広島大学医学部臨床教授を兼務。日本内科学会総合内科専門医・指導医。日本消化器病学会専門医・指導医・学術評議員。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・財団評議員他。趣味は「乗り物全般。特に“乗り鉄”」。

関連ニュース