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【個性派書店 おすすめの1冊】書物の魅力にあふれた贅沢な本 レーモン・クノー「文体練習」(朝日出版社) (1/2ページ)

 東京の神楽坂といえば、花街の風情を残す路地の散策や、おしゃれな雑貨店や飲食店めぐりなど、休日のお出かけスポットとして人気だが、もうひとつの顔がある。出版、印刷、製本などの会社が集まる「本の町」なのだ。

 地下鉄東西線神楽坂駅前の「かもめブックス」は、校正・校閲の会社である「鴎来堂」が手掛ける書店。長年、地元の人に親しまれてきた本屋が店を閉めることになって、「書店をなくしたくない」という思いから、2014年に同じ場所で開業した。

 「本を読む人が少なくなっていく中で、選ぶ楽しさ、読む面白さをできるだけ広く伝えたい。新しい読者を作っていきたいですね。入り口というのは常に意識しています」

 そう話すのは、企画や選書を担当している店員の前田隆紀さん(38)。店の「看板」となっている特集コーナーは、3週間ごとに約70冊を入れ替えている。常設コーナーの本は作家別や出版社別ではなく、テーマごとに棚に並ぶ。校正会社らしく、言葉にまつわる本の品揃えが充実している。

 ゆったりとした空間に、ギャラリーとカフェも併設。コーヒーは、京都で人気の焙煎所「WEEKENDERS COFFEE」から豆を仕入れている。「コーヒー店だけでもやっていけるぐらいのクオリティー」が支持されて、週末の店内はいつも満員だ。

 おすすめしてくれたのは、レーモン・クノー著、朝比奈弘治訳『文体練習』。ちょっと不思議な本である。「とある青年をバスの車中で見た。そのあと駅前の広場でまた彼を見かけた」という内容の短文が、メモ、隠喩、主観、客観、ソネット、アナグラム、短歌、擬音…さまざまな文体で記されている。つまり、99種類に言い換えられる。

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