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【松浦達也 肉道場入門!】陶酔感あふれる「ユッケ」の完成形 東京・目黒「焼肉稲田」 (1/2ページ)

★絶品必食編

 食べられるだけでありがたい…という類の食べ物がある。焼肉店で言えば、その代表的な存在が「ユッケ」である。

 細切りにされた牛肉の上にタレと薬味がかかっている。この肉を生で口にすることができるかと思うと、それだけで高揚してしまう。

 東京・目黒の名店「焼肉稲田(いなだ)」の「正真正銘のユッケ」は高揚感を生む存在だ。山頂に鎮座する卵黄は、峰に沈む太陽のように郷愁を呼ぶ神々しさすら感じさせる。

 山の頂の夕日に箸を入れると、黄金色の卵黄ダレが山の裾野へと向けて、とろとろと走り出す。混ぜきらないよう、ざっくりと箸を入れて肉をひとつまみ口に運ぶ。

 「嗚呼…」

 和牛はとろけるような舌触りでありながら、少しアゴに力を入れれば、後から旨味があふれる奥深さもある。

 口内全体に深く広がる卵黄のコクがタレの甘味と旨味を何倍にも膨らましていく。

 なんという陶酔感だろう。

 その昔、焼肉店における「ユッケ」は天才だった。色、形、姿すべてにおいて圧倒的だったし、店ごとに微妙に異なる味つけの差異が各店の特徴を際立たせていた。

 だがいまユッケは焼肉店だからといって食べられるメニューではない。

 一時期は、全国の焼肉店から姿を消した。その後、樹脂製のパッケージに入った味気ない姿で復帰を果たしたが、ごちそうはきちんと皿に盛られてこそ、真価を発揮する。

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