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【ドクター和のニッポン臨終図巻】一流だから書けた病のリアリティー 小説家・橋本治さん (1/2ページ)

 脊椎カリエスの正岡子規が死の2日前までその闘病を綴った『病牀六尺』が出版されたのはもう100年以上も昔のこと。そして今、闘病記は文学における一つのジャンルとして確立しつつあります。

 私も仕事柄、多くの闘病記を読みます。良い作品には、著者(話者)の客観的視点があるように思います。ただ感情にまかせて書いてみても、誰も読みません。どこか醒めた目で客観的に、死に近づきゆく自分を観察して書くことこそが、プロの仕事なのでしょう。

 小説家で評論家の橋本治さんが、1月29日に亡くなりました。70歳でした。死因は肺炎とのことですが、長く闘病をされていました。筑摩書房のPR誌で橋本さんは「遠い地平、低い視点」というエッセーを連載されていて、時折、御自身の病気にも触れていました。

 その連載によれば、橋本さんは9年ほど前に、「顕微鏡的多発血管炎」という原因不明の難病にかかっています。

 これは、顕微鏡でなければ観察できないほど小さな血管に炎症が起きて、出血したり血栓ができる病気です。主に、毛細血管が多くある腎臓や肺や皮膚に大きなリスクを与えます。早期発見できないと、腎不全や呼吸器不全で命を落とすこともある難病です。

 橋本さんは、投薬治療によってこの病気を寛解させました。しかし昨夏、大変治療の難しい「上顎洞がん」と診断されました。

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