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【マンガ探偵局がゆく】テレビアニメがオリジナルの変身ヒーロー 「遊星少年パピイ」

★ミッション(52)原作者は5人のミステリー作家&翻訳家

 今回はテレビアニメ創世記のヒット作に関する調査依頼だ。

 「横山光輝さん原作のテレビアニメ『鉄人28号』が終わったあと、『遊星少年パピイ』というアニメが始まったのを覚えています。ぼくはどちらかというと、鉄人よりもパピイが好きで、変身するときの『ピー!パピイ!』という掛け声を真似して遊んでいました。あのアニメの原作はどなたなんでしょう。やはり横山光輝さんですか?」 (まだ50代)

 『遊星少年パピイ』は、1965年6月から日曜夜の「グリコ劇場」第2作として全国のフジテレビ系列で全52話(31話からは木曜に変更)が放送された。

 主人公のパピイは、地球よりもはるかに文明が進んだ太陽系の未知の惑星・クリフトンの少年。野蛮で戦争の絶えない地球を見守るために派遣され、普段は地球人の少年として生活している。しかし、事件が起きた時には、胸のペンダントを手に「ピー!パピイ!」と叫んで、宇宙人の姿に。その力をフルに使って悪を倒す。

 前作の『鉄人28号』が雑誌『少年』で連載されていた横山光輝の人気連載マンガを原作にしていたのに対して、パピイはテレビアニメがオリジナル。舞台設定やキャラクターなどはフジテレビが視聴者の小学生にアンケート調査を行って、それをもとに決定された。

 原作・脚本としてクレジットされている吉倉正一郎は、脚本家として参加した5人の作家の名前を合わせたもの。1人目は日影丈吉で、大倉正兎、山村正夫、加納一朗、双葉十三郎と続く。いずれも当時気鋭のミステリー作家やミステリの翻訳家。テレビアニメ創世記には、ミステリーやSFの作家たちがストーリーライターとして大活躍したのだ。

 当時をよく知り、現在もミステリー作家、アニメ脚本家として健筆をふるう辻真先氏によれば、吉倉正一郎は作家集団のペンネームが原作者としてクレジットされた最初のケースだったという。

 『少年』にはマンガ版が放送開始の7カ月前から連載され、横山光輝の呼びかけた光プロダクション設立に参加したひとり、井上英沖が作画を担当した。

 普通の少年がスーパーヒーローに変身するというアニメはまだ珍しく、親近感を覚える子供が多かった。依頼人のように「鉄人よりも好きだった」というファンも少なくない。

 マンガ版は、パンローリングのマンガショップシリーズの単行本で読むことができる。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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