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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】地下の樽で「華やかに」熟成 100年前の希少なヴィンテージもあるシャトー勝沼

★山梨県シャトー勝沼(下) 

 山梨県甲州市勝沼町は、日本ワイン発祥の地であり、日本一のワイン産地だ。その勝沼で130年以上の歴史を持つ最古のワイナリーが、今村家所有のシャトー勝沼である。

 ワイナリーの周囲は鳥居平という銘醸地で、白は甲州、赤はマスカットベーリーA、ブラッククイーン、メルローなどを育てている。訪ねた時はちょうどシーズンもののデラウエアや巨峰を仕込んでいる最中だった。

 最適な収穫期に手摘みで収穫されたブドウは、敷地内の高地で圧搾、搾汁後、自然の高低差を利用して工場内のタンクへ移動させる。ポンプなどを使わず重力を利用することで、ブドウにストレスをかけないよう配慮がなされているのだ。

 搾汁された新鮮な果汁は酸化を防ぐため、ドライアイスガスで表面を覆い、空気中の酸素との結合を最大限遮断している。また、発酵タンクはすべて地下に設置されている。これは外気の温度や湿度から果汁を守るためで、安定した環境で発酵することにより、バランスのとれたワインが生まれるという。

 一般的に日本のワインは早飲みタイプが主流で、長期熟成タイプはほとんどない。ところがシャトー勝沼では、早くからヴィンテージワインを目指した取り組みを行っている。

 社屋地下には、フレンチオークの樽でワインを熟成しているほか、JR中央本線の旧深沢トンネルを改良した「勝沼トンネルワインカーヴ」には、約40万本のワインが熟成中だ。中には、100年前の希少なヴィンテージもあると聞く。全長1104メートルのトンネルはレンガ造り。冬場は14~15度、夏場は17~18度、湿度は60~70%と1年を通じて安定した環境は、長期熟成に最適なのだ。

 こうしたプレミアムワインは高額だが、手軽に楽しめるワインとしては、鳥居平100%のマスカットベーリーA2013年が秀逸だ。甘く華やかな香り、柔らかな渋みと旨みのバランスが素晴らしい。ブドウへの愛情と温かみが感じられるワインである。 (金曜日掲載)

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。近著は『ビジネスパーソンのための一目おかれる酒選び』(平凡社刊)。

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