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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】日本ワイン発祥の銘醸地 130年以上の歴史を持つ最古のワイナリー、シャトー勝沼

★山梨県シャトー勝沼(上)

 山梨県甲州市勝沼町は、日本一のワイン産地だ。日本で初めてワインづくりが始まったのも勝沼。明治政府の殖産興業政策の一環で、1877年に大日本山梨葡萄酒会社が設立されると、2人の若者がフランスに派遣されてワインづくりを学んできた。この会社の流れをくむのが今のメルシャンである。

 勝沼にある三十余りのワイナリーの中でも、同じファミリーが所有し、130年以上の歴史を持つ最古のワイナリーがシャトー勝沼だ。初代が今村葡萄酒醸造所を設立。その今村家の直系で4代目にあたる専務の今村英香さんが、畑の管理とマーケティングに携わり、夫の今村恒朗常務が製造を担っている。

 JR中央線勝沼ぶどう郷駅から徒歩15分という地の利もあり、見学コースやレストランもあるワイナリーは年間40万人が訪れる観光地でもある。

 英香さんに、自慢のブドウ畑を案内してもらった。真夏の暑い時期なのに、ワイナリーには富士山から吹き降ろす「笹子おろし」という冷たい風が吹いていて心地良い。昼は35~36度になるが、夜は23度くらいまで冷え、その温度差が、酸味があり甘いブドウを育てるのだ。自社畑は鳥居平という銘醸地で、標高500メートル以上の傾斜地。水はけが良く、ミネラル分豊富な醸造用ブドウの収穫に適している。棚式の明るいブドウ畑には、メルローがたわわに実っていた。

 「うちは全て棚式です。山梨は盆地なので、湿度が高い。棚は風通しが良く、湿気といっしょに土から病気が上がってくるのを防いでくれます。また、土壌が栄養豊富なので、根が広く張りますが、その分上の枝も広々させた方が、バランスが良い。そもそも山梨のブドウは1300年前から棚式です。土地の気候に合っていなければ、とっくの昔に欧米のような垣根式になっていたのではないでしょうか」

 自社畑と契約栽培畑で育てているのは、白は甲州、赤はマスカットベーリーA、ブラッククイーン、メルロー。それらを畑ごとに適期を定め、手摘みで収穫している。

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。近著は『ビジネスパーソンのための一目おかれる酒選び』(平凡社刊)。