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【BOOK】浅田次郎さん、66歳で初の戦場ミステリー 日中戦争期の万里の長城が舞台、従軍作家が挑むナゾ解き (3/3ページ)

 「そうですね。でも、僕はきちっと基礎から文学や文章を積み上げて勉強した人にはかなわないし、まねはできない。それが僕のコンプレックスでもあるんです。読者の支持を得られればいい、というのも、ちょっと違うと思うんですよ。もちろん得られるにこしたことはないけれど、それが書く目的じゃない。一番きれいなものを書きたい、いい文学作品を書きたい、それですね。いろんな経験をすれば、いいものが書けるという人もいるけど、僕は世俗にまみれ、むしろ“きれいなもの”から遠ざかってゆく気がするんです」

 --精緻な描写に驚かされます。取材は丹念にされますか

 「最近の小説に足りないのは『背景』の描き方だと思います。季節感や風景が欠落してるんですよ。どんな花が咲き、どんな鳥が鳴いているのか…色気がないのは嫌いなんです。会話だけでは心に残らない、大道具、小道具がない暗黒劇を見せられているみたい。面白いものの大前提は美しいものだと思います」

 --本が売れない時代になって久しいですが

 「みんな自信をなくして浮足立っている気がしますね。僕は『活字』や『紙』にこだわりたいし、読書は最大の娯楽だと思う。何千年も続いてきた文化がいきなり消えてしまうことなんて、ないですよ。ダメだダメだと言っていると思考停止に陥ってしまう。そんなことを言っているよりも、みんなで対策を考えるべきだと思いますよ」

 ■あらすじ 日中戦争開戦翌年の1938年秋、中国と満州国の境である万里の長城の張飛嶺で「事件」が起きた。そこを守る日本軍部隊の分隊10人が変死を遂げたのだ。共産主義者の匪賊(ひぞく)の攻撃か? それとも身内の反乱か? 人気の従軍作家と帝国大学出の検閲班長、そして、たたき上げの憲兵隊曹長の3人による「調査」が始まる。次第に衝撃の事実が明らかになってゆく…。

 ■浅田次郎(あさだ・じろう) 1951年、東京都生まれ。66歳。陸上自衛隊、アパレル業界などを経て、91年『とられてたまるか』で作家デビュー。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞受賞。主な作品に『蒼穹の昴』『中原の虹』『終わらざる夏』『壬生義士伝』など。時代小説、悪漢小説、エッセーなど幅広いジャンルで活躍している。

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