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【今こそ見たい緒形拳の世界】「峠の群像」 大河と同時進行でカンヌ最高賞映画撮影 (1/2ページ)

 松田聖子が『赤いスイートピー』を歌い、中森明菜、小泉今日子、早見優、堀ちえみら『花の82年組』アイドルがデビューした年、緒形拳は大河ドラマに帰ってくる。

 NHK大河ドラマ『峠の群像』の大石内蔵助である。俳優ならば一度は演じたい役だ。大河ドラマで大石内蔵助が登場するのは、1964年『赤穂浪士』の長谷川一夫、75年『元禄太平記』の江守徹に続いて3度目。前のふたりが格式ばった人柄だったのに対し、緒形内蔵助は内匠頭の松の廊下での刃傷事件の顛末(てんまつ)にうろたえ、お家が取り潰されると聞いて、妻、理玖(丘みつ子)の前でぐずぐず男泣きをする。

 こんな愛すべき内蔵助像が成立したのも、経済企画庁長官経験もある作家、堺屋太一の原作で、豊かな元禄時代を高度成長期の「峠」と位置づけ、経済という切り口で「忠臣蔵」を描いたから。赤穂藩断絶は、突然の企業倒産。管理職の内蔵助が泣きたくなるのもよくわかる。

 「元禄15年12月14日。いよいよその日の朝である」。加賀美幸子アナの落ち着いた語りも印象的。大石は「今宵(こよい)…今宵だと伝えてほしい」と志士たちに静かに語りかける。いざ吉良邸へ。「浅野内匠頭家来、吉良上野介様のお首をいただきにまいりました」ときっちり名乗りを上げたのは、片岡源五右衛門役の郷ひろみだった。緒形内蔵助は陣がさの下で難しい顔をして、吉良発見を待つ。白髪頭の上野介は、当時49歳の伊丹十三だ。

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