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【ぼくらの90年代音楽論 30年前の「音楽」の「普通」】大谷能生×速水健朗(3) 90年代に始まった「再評価」ブームとは (1/2ページ)

前回から続く)

大谷:あ、そういえば、「イカ天」とか見てた?

速水:地方だから放送がなかったです。一度、夏期講習とかで東京に行って見たんだけど、その時出てたのがカブキロックスで、多分イカ天のいい時代からは完全に出遅れていたんだと思います。思ってたのと違うって(笑)。だから、いまだに同世代で喋ってても、ホコ天とイカ天の区別が付いてないところがあるんだよね。The BOOMってどっち出身なの? みたいな。

大谷:あはは(笑)。ホコ天とイカ天と、タテ天とかエビ天出身とか行ったら信じちゃう。

速水:エビ天は実際にあったよ。映像クリエイーター版のイカ天で、高城剛が審査員だった。こっちは上京後なので見てました。

大谷:そうね。late80sからearly90sへの移り変わりで、音楽において何か印象深かったことはありますか?

速水:ユーミンの存在かな。当時のユーミンって、毎年年末になるとアルバムを出してミリオンセラーになっていたでしょ。あの頃のユーミンって松任谷由実な訳ですよ。すごい当たり前のこというけど(笑)。何かっていうと、90年代初頭に「はっぴいえんど」人脈の70~80年代作品の再評価っていうのが流行して、荒井由実も再評価ブームされる。『魔女の宅急便』とかもあったりして。キャラメル・ママの再発とか、松任谷正隆のアレンジ仕事も掘られていて。一方、リアルタイムには、恋愛の教祖としての松任谷由実を買っているリスナーがいる、同時に荒井由実しか見えてない消費者がいる。その両者が出会うことなく、すれ違っているみたいな消費状況はおもしろいですよね。90年代初頭くらいの現象かと。

大谷:いわゆる「はっぴいえんど史観」みたいなものが90s初頭から語られはじめて、10年かかって、それが日本のポップスのメインストリームだっていう歴史観が定着するような流れがあった。逆に言えば、それまではそういった言説はなかったし、必要ともされてなかった。どんどん過去のものは消えてゆくだけだったし。